昨夜はいかにもヨーロッパらしい、暗くて陰惨な感じのするフレンチ・ホラーを鑑賞しました。
「ザ・パック 餌になる女」です。
フレンチ・ホラーと言うと、「マーターズ」だの、「屋敷女」だの、暗くて陰惨なイメージが付きまといます。
![]() | マーターズ [DVD] |
モルジャーナ・アラウィ,ミレーヌ・ジャンパノイ,カトリーヌ・ベジャン,イザベル・ジャス,エミリー・ミスクジャン | |
キングレコード |
![]() | 屋敷女 アンレイテッド版 [DVD] |
ベアトリス・ダル,アリソン・パラディ,ナタリー・ルーセル | |
キングレコード |
さすがはサディズムの元祖、サド侯爵を生んだ国だけあります。
サド侯爵の代表作「悪徳の栄え」を翻訳した渋澤龍彦は、猥褻の罪で有罪になってしまったため、今でも渋澤訳「悪徳の栄え」には伏字があって、よけい猥褻な感じがします。
インターネットで無修正の写真や動画がいくらでも手に入る今もなお、伏字になっているのは、猥褻云々よりも、サド侯爵が当時の倫理規範であったキリスト教を否定し、ひいては国家を否定した、政治的な理由が大きいように思います。
国家にとっては、彼は今も危険な小説家であり思想家であり、それがゆえに文学として高く評価されていると言っても過言ではありません。
![]() | 悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫) |
渋澤 龍彦 | |
河出書房新社 |
![]() | 悪徳の栄え〈下〉 (河出文庫) |
渋澤 龍彦 | |
河出書房新社 |
まぁ、権力者の考えることなど、いつの時代も馬鹿げているものです。
サド裁判では、渋澤龍彦及び彼を擁護する芸術家たちが、裁判をまるでコケにしていてなかなか笑えます。
裁判記録が出版されているので、読むことができます。
独特の法律用語の難解さを差し引いても、爆笑必至のコメディです。
![]() | サド裁判 上 |
現代思潮社編集部 | |
現代思潮新社 |
![]() | サド裁判 下 |
現代思潮社編集部 | |
現代思潮新社 |
それはそれとして。
「ザ・パック 餌になる女」ですが、ポンコツの車で田舎道を走っていた若い女が髭面の若いヒッチハイカーを乗せたところから悲劇が始まります。
2人は舗装もされていない不潔な道を通って、ある軽食屋に立ち寄ります。
そこで髭面が、奇妙なジョークをかまします。
獣姦好きがサディストに、「猫と一発やろうぜ」、と言うと、サディストは「猫と一発やってから拷問しようぜ」、と言い、それを聞いていた殺人鬼が「猫と一発やって拷問してから殺そうぜ」、と言うと、ネクロフィリア(死体愛者)が「猫と一発やって拷問して殺してからもう一発やろうぜ」、とエスカレートさせます。
それを聞いていたマゾヒストが「にゃあ」と猫の啼き真似をするのがオチです。
その軽食屋、じつは髭面が母親と二人で暮らす実家。
その昔、母親は実の息子三人を炭鉱事故で亡くしており、満月の晩、炭鉱事故で亡くなった者の亡魂が、ほぼゾンビのような姿で現れ、生き血を求めるので、不憫に思った母親が、人をさらっては亡魂に生贄として捧げているのです。
しかし若い女、獅子奮迅の活躍で生き残りますが、オチはいかにも救い難いものです。
84分と尺が短く、引き締まった印象で、なかなか楽しめました。
![]() | ザ・パック 餌になる女 [DVD] |
ヨランド・モロー,エミリー・ドゥケンヌ,バンジャマン・ビオレ,フィリップ・ナオン | |
ビクターエンタテインメント |