ジャガーワールド

文学


 我が偏愛する作家、恒川光太郎先生の長編ファンタジー「ジャガーワールド」を読了しました。
 単行本で630頁の大作です。
 この小説家は短編や中編を得意とし、長編は多くありませんが、短編や中編にはない壮大で神話的な物語が語られます。
 マヤ文明に取材した作品のようですが、それはあまり気にしなくて良いでしょう。
 生贄を捧げないと神々が機嫌を損ね、飢饉や旱魃が起こると信じられていた古代文明。
 そこに反生贄の思想を掲げた反社会的と目される教団が誕生。
 勢いを増していきます。
 そしてはるか昔に滅びたとされる部族が密かに生き残ってどこからともなく現れ、人をさらったりして去っていきます。
 また、この部族は優れた賢者の国とも目されて、独特の文字を持ち、生贄を支持しています。
 王国に不満を抱く者達が教団と結託し、さらには生贄に供されてきた島の人々をも巻き込み、壮大な戦いが描かれます。
 恒川光太郎先生は一部マニアに愛される作家から、一気に広く一般に読者を広げることでしょう。
 考えてみると、ノーベル賞作家のカズオ・イシグロも「忘れられた巨人」というファンタジーを書いていますし、村上春樹にいたってはファンタジーだらけです。
 難を言えば、「ジャガーワールド」においてはやたらと人が死ぬこと。
 かつて村上春樹の「鼠三部作」では、趣味で小説を書いている通称鼠は、人が死なず、セックスしないのが自分の小説のルールだと言っていました。
 村上春樹の小説では人が死ぬしセックスシーンもあるのですが。
 いずれにせよ、数日間、幸せな読書体験を楽しめました。