今日はNHKで変わった能を観ました。
スーパー能「世阿弥」です。
梅原猛が書き下ろした全編現代語の能で、地謡や太鼓や鼓は能舞台に上がらず、オペラのオーケストラのように一段下に陣取っていました。
さらに、通常の能では照明を変化させることはありませんが、暗くしてみたり、青白くしてみたり、誠に奇異な能でした。
内容は、観世流の創設者にして能の大成者、世阿弥とその妻、さらには息子との情愛を描いたもので、現代語だけに分かりやすいものでしたが、どうしても能らしい幽玄の美のようなものが感じられず、中途半端な印象を受けました。
時の権力者、足利将軍に疎まれた世阿弥親子。
世阿弥の子、元雅は足利将軍が放った刺客に殺されてしまいます。
観世流が途絶えてしまう、と嘆き悲しんだ世阿弥は妻と心中することを決意しますが、そこに元雅の亡霊が現れて、自分は観世流を守るために死んだのだ、足利将軍の怒りはおさまり、まさか能の大成者である世阿弥まで殺害することはないでしょうから、どうか父上は長生きして観世流を復興させてほしい、と願い、去って行きます。
その噂を聞いた金春流など、他の流派の能楽師が世阿弥を訪ね、元雅から能の秘伝を教わったことを伝え、流派を超えて後世に残る能を作って行こう、と、世阿弥に自殺を思いとどまるよう説得します。
世阿弥は能の発展のため長く生きて精進すると誓い、世阿弥と能楽師たちはそろって能を舞うのです。
能らしからぬ感情的な作り込みですが、わりと面白く観られました。
なにしろ分かりやすいのと、親子の情愛や能に賭ける世阿弥のストレートな情熱が描かれていて、能に似た、しかし能とは違う舞台芸術なのだと思って観ればそこそこ楽しめると思います。
かつて市川猿之助、今の市川猿翁がスーパー歌舞伎で一世を風靡しましたが、私は全く関心がなく、昔ながらの歌舞伎ばかり観ていました。
テレビという媒体の気楽さでスーパー能を鑑賞して、まずまず楽しめたので、食わず嫌いせずにスーパー歌舞伎を観ておけば良かったと思わされた舞台でしたねぇ。