トランス・ワールド

映画

 なかなか緻密に作り上げられたミステリアスなSF作品を鑑賞しました。

 「トランス・ワールド」です。

 人里離れた森の中の小屋で、3人の男女が出会います。
 一人は車がガス欠となり、夫がガソリンを買ってくると言ったきり戻らないため、道から森に入ってきた若い妊婦。
 一人は車が自損事故で動かなくなったという若い男。
 最後は強盗事件を起こして逃げる途中、共犯の恋人に捨てられ、車から降ろされたという若い女。

 しだいに3人は力を合わせて難局を乗り切ろうとしますが、何かが奇妙です。

 どこを歩いても小屋に戻ってしまうこと、3人ともが自分がいる森を違う場所だと認識していること、さらにはファッションや髪型がそれぞれ時代が合いません。

 予告編をご覧ください。



 ついに、ただ今現在を、妊婦は1962年、強盗女は1985年、男は2011年だと主張します。

 不思議に思いつつ森で食料を探していると、古い防空壕を見つけます。
 中に入ってみると、ポーランドの地図、1920年代のワイン、1930年代のドイツ製缶詰などが、新品同様の状態で置いてあります。

 そこで3人は、時空を超え、第二次大戦中のドイツ占領下のポーランドの森に彷徨いこんだらしいことに気付きます。

 妊婦と強盗女は2011年にはタイム・トラベルが可能なのかと問いますが、男は苦笑いしてそんなことは無理だと応えます。

 そして、若いドイツ兵が現われます。
 ドイツ兵は3人のアメリカ人を銃で脅して縛りますが、ある物を発見して興奮します。
 ドイツ兵が持っている妻の写真を入れたロケットを、妊婦が持っているのです。
 さらには、強盗女も持っており、若い男もかつて持っていた、と告白。

 互いの境遇や生年月日を語り合ううち、ドイツ兵は妊婦の父親であり、妊婦は強盗女の母親であり、若い男は強盗女の倅であるらしいことに気付きます。

 しかし、ドイツ兵は娘の顔を見ることもなく戦死し、妊婦は出産直後に亡くなり、強盗女は父をベトナム戦争で亡くして孤児となってぐれてしまい、出産後数ヶ月で強盗殺人の罪で処刑されているらしいことが分かります。
 ために、父たるドイツ兵、娘たる妊婦、孫たる強盗女、ひ孫たる若い男は、みな互いを見たことがないわけです。


 閉じ込められた森こそ、ドイツ兵が空爆時に戦死した場所であることを確信した3人は、とにかくドイツ兵に任務遂行を諦めさせ、防空壕に導いて戦死を防ぐことが、不幸な一族の未来を変えることに繋がると信じ、行動を共にするのです。

 緊迫感のある映像、少しずつ明らかになっていく謎、冒頭の強盗シーンの意味など、良く出来た娯楽作です。

 尺も90分とお手ごろで、お勧めできる一作です。

トランス・ワールド [DVD]
サラ・パクストン,スコット・イーストウッド,キャサリン・ウォーターストーン,ショーン・サイポス,クリストファー・デナム
アメイジングD.C.

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