昨夜、ニコール・キッドマン主演の「ドッグヴィル」を観ました。
約3時間の大作でしたが、長さを感じさせない、よくできた心理劇でした。
時代背景は1920年代でしょうか、ギャングに追われる女、グレースが、山の中の小さな村、ドッグヴィルに逃げ込みます。
村人は集会を開き、二週間グレースを各家で労働させて人柄を見極め、かくまうかどうか決めよう、ということになります。
二週間後、グレースは村人に気に入られ、村人の仕事を手伝いながら、のんびりと牧歌的な生活を楽しみます。
しかし、グレースの美貌と寛容の精神が、かえって村人たちの反感をかうようになります。
居心地の悪くなったグレースは逃亡を図りますが、村に帰されてしまいます。
それどころか、逃亡防止に首輪をつけられ、首輪には長い鎖の先に重りまでつけられて、重りを引きづりながら生活するよう強制されます。
ラストは意外ではありませんでしたが、グレースの人間性もまた、ドッグヴィルの人々と変わらないのだということを実感させます。
極端に簡素な舞台装置は能舞台に、耳障りなほどしつこいナレーションは能の地謡に通じているように思いました。
人物を型にはめて描く手法も能に似ています。
人間の小さな集団がふとしたきっかけで狂気を帯び、おかしい、と思いながら誰も事態を重要視せずに放置し、狂気はさらに大きな狂気を呼び、ついには悲劇的な結末に至る。
この映画は人間性をあまりに深く描いたために、観る人によっては不快に感じるかもしれません。
しかし人間社会で生きていくうえでは、不快な事件や事象はひきもきらず。
この不快な名作から、人間の愚を学ぶべきでしょう。
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