寒い土曜日、もう一人のクロサワ、黒沢清のDVDを鑑賞しました。
「ドッペルゲンガー」です。
一般にドッペルゲンガーというと、自己像幻視とも呼ばれ、自分とそっくりの人間を目撃し、そのすぐ後に死亡する、という西洋の伝説ですが、日本でも影の病と言われ、民間伝承に見られます。
しかし本作は、自己像幻視というよりやんちゃなそっくりさんが現れて生活を滅茶苦茶にされる、というブラック・コメディっぽい内容で、E.T.A.ホフマンの「悪魔の霊酒」等にみられる幻想的で浪漫的なイメージを破壊しています。
多分、ドッペルゲンガーである必要性はなかったのだろうと思います。
双子の兄弟でも、他人の空似でも。
そういう意味では、ドッペルゲンガーという言葉にまつわる幻想的で怖ろしいイメージを騙って商売に走ったと言えなくもありません。
そういうあざとさを抜きにこの映画を観ると、じつは人間の欲望や人生の不条理をブラック・コメディに仕立て上げた大人の鑑賞に耐えられる名画と観ることができます。
役所広司が、研究一筋でくそ真面目な医療用ロボットの研究者と、それとは正反対のいい加減で享楽的なドッペルゲンガーを好演しています。
くそ真面目な研究者と恋仲に陥る永作博美がじつはドッペルゲンガーに惹かれていたり、助手役のユースケ・サンタマリアがロボットの成功を目前にしてその功績を独占しようと凶暴に変化したり、あの手この手で楽しませてくれる、大人のおとぎ話です。
しかしおとぎ話の終わりは、どこか切なくてさびしいもの。
この映画も例外ではありません。
タイトルから受ける先入観を除けば、良い映画だと思います。
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