昨夜、川端康成先生の少女小説、「親友」を読みました。
なにしろ子供向きに書かれた小説ですから、たいへん読みやすいものでした。
それでいて、川端康成先生らしい、文学的香気にあふれた佳作だったと思います。
![]() | 親友 (小学館文庫) |
川端 康成 | |
小学館 |
川端康成先生の、いわゆる純文学作品は、今も文庫本などで容易に手に入りますが、結構書かれていたという少女小説は、あまり見当たりません。
そういう意味では、貴重な復刻です。
私はかつて、戦前の少女たちに人気を博したという雑誌、「少女の友」復刻版で「乙女の港」という少女小説を読んで、感銘を受けたことがあります。
![]() | 完本 乙女の港 (少女の友コレクション) |
中原 淳一 | |
実業之日本社 |
これは、戦前の女学生たちの間で流行したという、S(sisterの略)という、少女同士の疑似恋愛を描いたものです。
昨夜読んだ「親友」は、もう少し幼い、中学1年生の少女たちの物語で、時代もややくだって、戦後、昭和25年頃を舞台にしています。
中学の同級生で、顔も背丈もそっくり、誕生日まで一緒だった2人の少女と、家族や先生との間の短い物語です。
夏休み、鵠沼の海岸近くの親戚の家で2人で滞在して楽しく過ごす様子が生き生きと描かれています。
悪い人など登場しません。
この世にはあり得ない、麗しい物語です。
ただ、年齢設定が幼いせいか、「乙女の港」に見られたような、少女同士の疑似恋愛、三角関係、嫉妬、といった、興味をそそる要素が少なく、おじさんとしてはそこが物足りなかったですねぇ。
日頃、残虐非道な殺人鬼が出てくる小説や、悪霊が出てきたり血がドバドバ出るようなホラー映画を好む私ですが、時折、ただ麗しいだけの小説が読みたくなります。
その点、昔の少年小説はいただけません。
むさ苦しいばかりです。
私は少年小説よりも少女小説を好む、不気味なおじさんです。