バイロケーション

映画

 ドッペルゲンガー現象という言葉は、わりと知られているかと思います。
 自分とそっくりの、もう一人の自分を見てしまうと、間もなく死ぬ、というアレです。
 芥川龍之介が経験したとも伝えられます。

 バイロケーションは、複数の自分が同時に他の場所に存在する現象で、ノストラダムスは自在に複数の自分を生み出せたとか。

 昨夜、「バイロケーション」という映画を鑑賞しました。



 この映画では、偽者の自分は本物の人生を奪いに来る、という設定で、当初偽者は怖ろしい悪意に満ちていると思わせます。

 しかし映画がラストに近づくと、偽者は自分を本物と思いこみ、本物を偽者だと考えて怖れ、本物である自分が生き残り、偽者を抹殺すべきだとまで思い込み、ために本物に危害を加えてしまう、という哀しい理由が隠されていることに気付きます。

 そしてまた、そうとは知らずに偽者の女性と恋愛関係に陥り、結婚した男が、偽者と本物が存在することを知り、どうにか両者が平和的に共存できないかと模索しているなか、本物が自殺し、本物が死ぬと偽者は存在できないため、妻も消えてしまったことから、バイロケーションという不幸な境遇に陥った者と接触し、本物とも偽者とも本物だとして接し、平和的共存を図るもうまくいかず、嘆き悲しむわけですが、これはなかなか示唆に富んでいます。

 近親憎悪のように隣国同士憎みあい、果ては殺し合いまでしてしまう世界の縮図のように思えるのです。

 恐怖映画には、怖いだけでなく、哀しみのスパイスを効かせなければなりません。

 そういう意味で、この映画はよく出来ていると感じます。

バイロケーション DVD スタンダード・エディション
水川あさみ,千賀健永,高田翔,滝藤賢一,浅利陽介
ポニーキャニオン

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