パパ・ダイキリ

文学

  この前の記事で、今日は愛酒の日だと書きました。
 そこで外国の文学者で酒好きというと、中国の李白、米国のバロウズヘミングウェイ、フランスのヴェルレーヌなどが浮かびます。
 欧米の文学者は誰でも大抵酒飲みのイメージがありますね。

   四六時中飲んでいる李白の詩を一つ。

 春日 酔いより起きて志しを言う

 世に処(お)ること 大夢の若し
 胡為(なんす)れぞ 其の生を労するや
 所以に終日酔い
 頽然として前楹に臥す
 覚めて来たって庭前を眄(なが)むれば
 一鳥 花間に鳴く
 借問す 此れ何れの時ぞ
 春風 流鶯に語る
 之に感じて歎息せんと欲す
 酒に対して還(ま)た自ら傾く
 浩歌して明月を待ち
 曲 尽きて已に情を忘る

 この世は胡蝶の夢の如きもの、人生なにをあくせくと過ごす必要があろうかと、またまた酒に酔いつぶれていた李白が、酔いから醒めてふと庭先をなにげなく眺めやると、花の間で小鳥が一羽さえずっています。
 李白が、「いまはいつ頃だろうか」とつぶやいたとき、枝々を飛びまわる鶯の鳴き声が春風にのって聞こえてきました。
 李白の耳にはその鳴き声が「春だ、春だ、命に満ちた春の日だ」と聞こえ、彼は、生命の春を大いに満喫しようとまた独酌をはじめます。
 
 牧水先生に勝るとも劣らない飲みっぷりですねぇ。

 先に名前を挙げた文学者のなかでは、私はヘミングウェイにシンパシーを感じます。
 「老人と海」などが評価され、ノーベル文学賞を受賞しますが、航空機事故で授賞式は欠席せざるをえませんでした。
 後に事故の後遺症から躁鬱病を発症し、鬱々とした気分のまま、ライフルで自殺してしまいます。
 その彼が好んだカクテルがダイキリで、私もショートの中では最も好むカクテルです。
 キューバのバーでは、ヘミングウェイが頼むダイキリを、パパ・ダイキリと呼んでいたそうです。

ヘミングウェイです。

 ヘミングウェイというと、わが国の故開高健のような、太っちょで行動的でハード・ボイルドな感じのおじさんを想像しますが、晩年の彼には昔の面影はなかったようです。

 躁鬱病で自殺なんて聞くと、身につまされちゃいますねぇ。

 明日のことは誰にもわかりませんが、私は憎まれっ子世にはばかる、というとおり、あんなジジイ早く死ね、と陰口をたたかれるくらいまで長生きし、いよいよ臨終というときは世を呪う言葉を吐き、最後っ屁をひって死んでいきたいものです。

李白 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)
筧 久美子
角川書店
李白詩選 (岩波文庫)
松浦 友久
岩波書店

 

老人と海 (新潮文庫)
Ernest Hemingway,福田 恆存
新潮社

 

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