子どもは残酷だ、とはよく言われることですね。
新学期を迎えて、小学生の集団登校を見かけますが、一人で三つもランドセルを持っている子がいます。
いじめなのか、あるいは何らかのゲームで負けた罰なのか不明ですが、見ていて気持ちの良いものではありません。
小学生時代、大抵の子は意味もなく虫を殺した経験があるのではないでしょうか。私も蟻を踏みつぶしたりしました。
また、子どもが好むヒーロー物や戦隊物などは、明らかに善とされる側のほうが残虐です。
例えば仮面ライダーでは、ショッカ―と呼ばれる兵隊が大勢出てきますが、仮面ライダーはためらうことなくこれを倒していきます。
ウルトラマンもマジンガーZも敵を殺害することを躊躇しません。
宇宙戦艦ヤマトやガンダムは、まるっきり現実の戦争の焼き直しであり、互いに大量虐殺しあう映像を観て視聴者は喜んでいるわけです。
ヤマトが敵に特攻を行う場面などは、片道分だけの燃料を積んで自殺行為のような沖縄への援軍派遣を試みた戦艦大和とだぶって、まともに観ていられません。
「戦艦大和ノ最期」は壮麗な文語調でこの悲劇を語って見事です。
極めつけが、ピーター・パンでしょうね。
ディズニーの「ピーター・パン」は原作が持つ主人公の子どもらしい残虐性や身勝手さを隠していますが、原作はピーター・パンを自己中心的で残酷な、しかし純粋な少年として描いています。
一方敵役の海賊、フック船長は合理的で紳士的な、しかし狡猾な人物として描かれています。
ピーター・パンは海賊を何人も殺害しており、殺人に何のためらいも示しません。それは彼の仲間のロスト・ボーイズも同様です。まるで虫を殺して喜んでいた私や友人たちの少年時代のようです。
またディズニー映画ではピーター・パンの幼い恋人であり母親的存在でもあるウェンディに対し、原作のピーター・パンは極めて冷淡な態度を取っています。しかしピーター・パンの年齢を考えれば、少年らしい照れや、異性への戸惑いから、少女に冷たい態度を取るのはむしろ自然なことでしょう。
大人にならないピーター・パンが住むネヴァー・ランドには子どもしかいません。
しかし現実の人間は、モラトリアムを気取ろうと、引きこもって二次元の世界に逃避しようと、マイケル・ジャクソンのように金にまかせて人工楽園のようなファンタジーの世界を造って夢幻を見ようと、夭折しないかぎり必ず成長し、老い、死んでいきます。
そう考えると、例えピーター・パン症候群と言われようと、子どもだけの世界でやりたい放題が許されるこの物語に、大の大人が魅かれるのも、無理からぬことだと思うのです。
↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
