ファウンド  静かで上品な、しかし怖ろしい映画

映画

 痛み止めが効いたのか、偏頭痛もだいぶ治まり、DVDを借りてきました。

 「ファウンド」というホラーを鑑賞しました。

 この作品、一風変わっています。
 いわゆるエンターテイメント的な、観る者を怖がらせるようなものではなく、どこか文学的な香りさえ漂わせながら、じつは相当にグロイ映画です。

 



 12歳のイジメラレっ子の少年。

 彼は密かに家族の秘密を覗き見ることが好き。

 父親の秘密はガレージに隠してあるポルノ雑誌。
 母親の秘密は昔の恋人から送られたラブレター。

 そして兄の秘密は、クローゼットに隠してある生首。
 しかも数日ごとに、生首は別の物になっています。

 兄は連続殺人鬼であることが示唆されます。

 少年のもう一つの趣味は、ホラー映画を観たり、自らホラー漫画を描いたりすることです。

 少年の目を通して静かに物語が語られる、という趣向なので、兄がいつ、どこで殺人を犯しているのかは分かりません。
 むしろ兄は少年に優しく接し、とても連続殺人鬼には見えません。

 少年の日常が淡々と綴られる前半。
 イジメや喧嘩があって、それを乗り越えていく教養小説のような趣です。

 映像も静かで美しい。

 しかしラストにいたって、ついに少年は兄の本当の顔を知るのです。

 しかも、標的は両親。

 兄はその理由を、兄弟が解放されるためだと語ります。

 ラストの怖ろしさはホラー映画史上屈指のものだと思いますが、それすら、残酷シーンを少年が目撃していないために、客には提示しないのです。
 どこまでいっても、少年の目線で描かれた物語ですから。

 印象は不思議な感じです。
 ホラー映画を観たような気がしません。

 映画のなかで、少年が鑑賞するB級 ホラーの映像と比較して、この作品の映像は奥ゆかしいとさえ言えます。

 エンターテイメント性豊かな、分かりやすいホラーを望む方にはお勧めできません。
 かといって、文芸作品を観たい方にも。

 これは相当コアなホラー・ファンでないと楽しめないのではないでしょうか。

 世界各地で40もの映画賞を獲得したそうですが、だからと言って安易に観ないほうがよいような気がします。


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