今日は休暇を取りました。
障害者自立支援法の継続申請を行うためと、車の定期点検のためです。
朝一番で、悪を描いた文芸大作「マンク~破戒僧~」を鑑賞しました。
160年もの長きに渡ってフランスで発禁処分を受けていたといういわくつきの暗黒文学が原作になっています。
17世紀スペイン、マドリード。
赤子の時にカトリック修道院の前に捨てられたアンブロシオは、町中の人に尊敬される優秀な神父に成長しました。
すべての欲を絶ち、規律を重んじて粛々と日々を送るアンブロシオですが、出生の謎と、ひどい頭痛に密かに悩まされています。
ある日、傷ついた顔を隠すために仮面をかぶっているという見習い修道士がやってきます。
“彼”は、なぜかアンブロシオの頭痛を和らげる力を持っていました。
しかしその正体は、彼に近づく為に修道士に扮した魔性の女だったのです。
その美しい女の誘惑にかかり、アンブロシオは戒律を破ってしまいます。
破戒僧となった彼は、欲望を抑えることが出来なくなり、魔性の女の意のままに、黒魔術に手を染め、聖なる教会を黒ミサで汚し、強姦、窃盗、殺人とあらゆる悪徳に身を沈めていくのです。
女色に目覚めた彼は、熱心に修道院に通ってくる町の中流家庭の美少女に懸想します。
じつは彼は商人の娘と大貴族の子息の間に生まれた子で、幼少のみぎり、大貴族の命により使用人に殺害されていたはずでした。
しかし使用人は赤ん坊を不憫に思い、修道院の玄関に捨てるのです。
その肩には大きなあざがあります。
魔性の女に不思議な花をもらい、その花の匂いがかがせればどんな女も落ちる、とささやかれます。
情欲の虜となった彼は、密かに美少女の家を訪れ、姦通。
それを見つけた美少女の母親を刺殺してしまいます。
まさに死のうとする瞬間、母親は彼の肩に刻まれたあざをみて、死んだはずの長男だと確信します。
彼は信者との姦通だけでなく、知らず知らずのうちに近親相姦の罪をも背負ってしまったのです。
仮面をかぶって修道院に入り込んだ魔性の女こそが、悪魔の化身と見てよいでしょう。
しかしその正体、目的ははっきりせず、強いて言えばアンブロシオを悪の道に引きずり込むこととしか思えません。
ここら辺の入り組んだ因果を伴う演出は、悪を描かせれば世界一の舞台芸術である歌舞伎と相通ずるところがあります。
それにしても中世のキリスト教圏というのは不思議な点が多々あります。
人間が作り出したに過ぎない悪魔という概念に怯え、常に悪魔との戦いの準備をしています。
わが国を始めとするアジア諸国では、ついに絶対悪という概念を持つに到りませんでした。
善悪は相対的なものであり、簡単に互いが置換するという感覚は、日本人なら子どもでも自然に身につけます。
まして女色が悪というのはおかしいですね。
人類が生き残るためには絶対に必要なことですから。
キリスト教原理主義者は生殖のための性交しか認めておらず、従って子が出来るはずのない同性愛や肛姦を禁じるばかりか、コンドームをつけての性交も禁じているとか。
肉の穴に肉の棒を差し込む程度のことで大騒ぎするのは滑稽でさえあります。
古来わが国では性に大らかで、異性愛も同性愛も粋な遊びとされてきました。
その伝統は今に引き継がれ、性は楽しむものであって禁忌するものではありません。
性に大らかな国、時代に生まれて良かったと、心の底から思います。
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