昨夜は久しぶりに文芸映画を鑑賞しました。
今年2月に劇場公開された「パレード」です。
東京の片隅でルームシェアをして暮らす4人の若者。
28歳の映画製作会社に勤める健康マニアで夜のジョギングを欠かさない青年、大学三年生の青年、自称イラストレーターでショップ店員の女、恋愛中毒で無職の女です。
気に入らなければ出ていけばいいし、いたければ笑っていればいい、それがルームシェアのルールです。
4人の日常は穏やかに過ぎていきます。
そこへ、自称イラストレーターの女が泥酔して連れてきたらしい18歳の男娼が加わることで、穏やかな日常は、少しずつ狂っていきます。
若者たちのルームシェアは、いつかは終わる夢の空間。
いわば、モラトリアムの城。
その夢を長引かせようとして、ルールが若者たちの心を蝕んでいきます。
藤原達也、香里奈、貫地谷しほり、小出恵介、林遣都といった個性ある役者たちが、激しさを内に秘めながら、静かな良い演技をしています。
抑えた演出が、小さな共同体が人間の集まりであるがゆえに、歪んでいかざるを得ない様を浮かび上がらせます。
後味は悪いですが、名作だと思います。
大声のセリフが無いのが良いですね。
吉田修一の原作を読んでみたくなりました。
なぜか、色川武大の短編、「少女たち」を思い出しました。
直木賞受賞作「離婚」の前段にあたる作品で、家出した少女数人と共同生活を送る中年男を描いています。
少女といっても肉体的には大人。
中年男は共同生活を、遊園地、と呼んでいます。
大人になることを拒否した少女たちと、遊園地で遊びたい中年男。
ここもモラトリアムの城のようです。
古くは三島由紀夫の「鏡子の家」に見られるモラトリアムの城を描いた青春群像劇。
不可能を夢見るそのはかなさと危うさは、滑稽でもあり、切なくもあり。
「パレード」、自信をもってお勧めします。
↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
