抱腹絶倒のコメディーを観ました。
「ヤギと男と男と壁と」です。
米国に実在したという超能力戦士の部隊、新地球防衛軍の元兵士のリンは、ヤギをにらみ付けるだけで殺害できるというスーパー戦士です。
彼は部隊の創始者で元ヒッピーのビルが幽体離脱して自分を救ってくれ、と言われたため、イラクに向かいます。
クウェートで入国待ちをしている時に出会った新聞記者のボブは、リンのぶっ飛んだ話に興味を持ち、彼と行動をともにすることに。
しかしリンは、イラクのここいら辺り、という大雑把な情報しか幽体のビルから聞いていないため、砂漠を彷徨ってテロリストに捕らえられたり、米国の警備会社同士が互いに相手をテロリストと信じて撃ち合う修羅場で出くわしたり。
もともとソヴィエトが超能力を軍事的に応用することを研究しているという情報を得た米国国防総省が、どんなことであってもソヴィエトに遅れをとってはならない、という理由で始めた奇妙な部隊。
LSDをやって焼け石の上を裸足で走りぬけたり、勃起したペニスに30キロの重りをぶら下げ、持ち上げようとしたり、その他透視やら念力やら瞑想やら。
兵たちはジェダイを名乗り、長髪に髭のヒッピースタイル。
最終的な目標は非殺傷兵器=超能力で世界の紛争をやめさせ、世界平和を実現すること。
非現実的なようでいて、意外と権力者は超能力を軍事や警察に応用しようと試みることが多いものです。
英国の警察では、行方不明者や犯人の捜索に、国費を払って超能力者を雇い、実際に成果を上げていると聞きました。
現実に役立てば理屈は後からついて来る、という経験主義の英国人らしいやり方です。
多分超能力というのは言語矛盾であって、実在すればそれは単なる能力なのでしょう。
白いボールを木の棒で打ち返すのが異常にうまいイチローや、盛り土した丸い俵の上でデブを押したり引いたり投げたりするのが得意な白鳳、あるいは芸術家、職人。
その道を極めた人というのは、一般人からみたら超能力者のようなものです。
いわゆる超能力と言われるものも、そういった抜きん出た才能なのではないかと思います。
よくテレビなどで超能力の成功率が低いことをもって偶然だとかインチキだとか言う人がいますが、イチローだって三回に一回程度しかヒットは打てないし、白鳳だって勝率10割ということはあり得ませんし、人気作家だって駄作を書くものです。
この映画、単なるおバカ映画かと思うとそうでもなくて、ヒッピーが行ったドラッグや乱交などのニュー・エイジ運動、イラク戦争やベトナム戦争などの米国にとって失敗した戦争、自由の名のもとに行われ、現在も続いている大量消費社会を押し付ける新植民地主義、どれも米国人にとってトラウマともいうべき事柄が素っ気無く語られ、彼らにとっては苦々しい物語になっています。
役者も豪華で映像に気品があり、これはコメディの名作として残ることになると思います。
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