先日某新聞で、ナチやヒトラーの思想、行動を、他の主義主張と平等に論じることがあってはならない、という内容のコラムを見かけました。
馬鹿なことをお言いではありませんよ。
ナチは当時世界で最も民主的と言われたワイマール憲法下、民主的な選挙で政権をとり、国会では民主的な手続きで全権委任法という法律を通し、ヒトラーに独裁権限を付与したのです。
そして当時のドイツ国民の多くが、熱狂的にそれを支持したのです。
クーデターを起こしたり革命を行ったりした結果生まれた独裁政権ではありません。
民主主義国家が民主的手続きを経て独裁国家を誕生させるという悪夢を実現した、稀有な例です。
稀有な例ではありますが、民主主義国家にはどの国にも、同様な危険が潜んでいます。
わが国も、男性のみではありますが普通選挙法が通った後に、普通選挙によって大政翼賛会が生まれたのです。
米国でも、第二次大戦後、マッカーシー議員が主導したレッド・パージによって、多くのリベラルな思想を持った人が赤のレッテルを貼られ、職を失い、白色革命の一歩手前まで行きました。 マッカーシー議員です。
そのような近現代史に鑑みるに、ナチの思想や行動は、特別なものではなく、それを特別視することは、今後の独裁政権誕生防止を阻害することになります。
大新聞の論説委員のごときインテリが、そんな色眼鏡でナチを見ているようでは、先が思いやられます。
戦前・戦中のわが国の大新聞が、米国討つべしの大合唱を繰り広げ、世論をミス・リードしたことを、よもやお忘れではありますまい。
およそ人間が考え出した主義主張や政治行動、軍事行動、戦争犯罪などに、特別なものなどありはしません。
どこの国の歴史をみても、それが大国であればあるほど、大きな過ちを犯しているものです。
現在世界唯一の超大国である米国にいたっては、国家の成り立ちにしてからが、ネイティブ・アメリカンを大量虐殺し、土地と富を奪い、ついには完全に簒奪し、その後は安価な労働力を求めてアフリカから大量の黒人を拉致して強制労働させたではありませんか。
そして今にいたるもネイティブ・アメリカンの末裔を、都会から遠く離れた居留地に住まわせ、生活保護と称して涙金を支給し、ろくに仕事をさせません。
その上正義面をして他国の紛争に介入しては余計にその国を混乱させたりしています。
しかもわが国は、軍事的にはその米国に保護されているという情けなさ。
自主防衛は書生論、と言ったのは宮澤喜一元総理でしたか。
それはそうなのでしょうが、一国の指導者がそんな志の低いことでどうするのですか。
ワイマール憲法下、ドイツで起こった事態を、冷静に分析し、ナチは悪の権化と決め付けるようなことは止すべきでしょう。
明日はわが身ですよ。
そもそも絶対的に悪な国家など、この世に存在しえないのですから。
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