田名角栄が飛ぶ鳥落とす勢いで出世街道を突っ走っていた頃、秘書に、日本社会は三すくみになっていて、だからうまくいく、と語っていたそうです。
三すくみとは、政治家と役人と国民が、それぞれに怖い相手がいる、ということです。
役人は幹部職員の人事権を持つ大臣などの政治家が怖ろしく、政治家は選挙があるし世論も気にするので国民が怖ろしく、国民は現場で実際に権力を行使する警官や税務署などの役人が怖ろしい、というわけです。
なるほど。
じゃんけんみたいなものですね。
ということは、少なくとも田中角栄や、三角大福中と呼ばれた自民党のかつての総理大臣たちは、今のように官僚主導などとは夢にも思っていなかったのでしょう。
そうでなければ、役人は政治家が怖ろしいはずだなんて思うわけがありません。
実際、田名角栄は様々な大臣を経験しましたが、小学校卒の彼が乗り込むと、東大卒のエリートがひしめくキャリア官僚は、ほとんど角栄ファンになってしまった、と聞きます。
田名角栄は人心掌握が得意で、しかも確固たる信念を持ち、しかも政策実行が素早かったそうです。
当時の大臣は、現在の民主党のように官僚を敵視したりせず、うまくおだてて使うことが大臣の仕事と心得ていたものと思われます。
そうかと思うと、自分の考えに異を唱える幹部職員に対しては、形式上は昇任だが実際には閑職でしかない、地方部局の長に飛ばしたりして、他の役人を震え上がらせるような人事をやってのけたと言います。
まぁ、見せしめでしょうねぇ。
それを見ていた元秘書たちは、今、あるいは国会議員になり、あるいは隠居したりしていますが、一様に、民主党政権下の閣僚の言動が我慢ならなかったと言い募るそうです。
当たり前です。
ろくに知りもしないで部下の悪口を言って回れば、部下のモチベーションは下がり、やがてサボタージュを決め込むようになります。
人はおだててやらなければ能力を発揮しないように出来ています。
暴言を吐いておきながらそれが問題になると、叱咤激励の意図だったと、必ず醜い言い訳をする上司が後を絶ちません。
私も22年間でたった一人だけですが、私を貶すという信じがたいほど愚かな上司から暴言を受けました。
マネージメントの何たるかを知らず、どういうわけか出世してしまった不幸ですねぇ。
その人も今年度いっぱいで退職します。
まぁ、もうどうでもいいですが。
安倍政権になってからは、どの大臣も役人をうまく使っているように見受けられます。
田中派出身の国会議員もまだ多くいますからね。
あ、でも鳩山元総理も元々は田中派でしたね。
それに外務大臣時代役人と対立した角さんのご息女。
何事も例外はあるということでしょうか。