不完全

社会・政治

  またもや福島原発への海水注入中断について、新しいニュースがありましたね。
 東京電力は海水注入開始の3時間以上も前に原子力安全保安院に報告していたとか。
 そうなると菅総理が報告を受けていないというのは嘘か、あるいは原子力安全保安院が情報を止めたか、どちらかしかありません。

 一連の民主党政府の対応を見ていると、いかにも人間というのは不完全な生き物だなと思います。

 そういえば1930年代、哲学や文学、物理学などが不完全であるのに対して、数学は完全であり、神の学問だという夢を追った人々がいました。
 ヒルベルト派と呼ばれる人たちです。
 しかしその夢は、呆気なく崩れ去ることになります。

 ゲーテルと言う人が、不完全性定理を発表したからです。

第1不完全性定理
 自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、ω無矛盾であれば、証明も反証もできない命題が存在する。

第2不完全性定理
 自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、無矛盾であれば、自身の無矛盾性を証明できない。

  ちょっと乱暴ですが、「この文に書かれている事は間違っています」という文があるとします。
 この文に書かれている事が正しいと仮定すると、この文は間違っている事になります。
 しかし、この文に書かれている事が間違っていると仮定すると、この文は正しいという事になります。
 どちらを選んでも矛盾が発生するので、不完全です。

 ヒルベルト派ゲーテルに反感を持ちながらもその言い分が正しいことを理解し、沈黙する他ありませんでした。

 これを敷衍して、グリム「公理系が無矛盾であれば、真偽不明な問題が存在する」から、完全な全知神などいないとして神様が存在しないことを証明しました。

 でもこれ、仏教のの思想に似ているような気がします。
 物事はすべて因縁と縁起によって成り立っており、この世に実体は存在せず、存在しないから実体で有りうる、というのが私のの解釈です。

 結局のところ、完全なものなどこの世に存在し得ないということですが、じつはそんなこと、一々証明したり定理を作ったりせずとも、多くの人は常識として知っていることです。

 そんな思考の遊びをせずにはいられないということ自身が、不完全の証拠。
 
 不完全な人間が不完全な世界で作り上げた不完全な原子力発電所。
 
  このたびの事故を受けて、菅内閣には、世界に広く情報公開し、今後の原発事故再発の危険性を低下せしめるよう努力してほしいものです。

 間違っても大本営発表のような愚行は犯さないように、お願いしますよ。

不完全性定理―数学的体系のあゆみ (ちくま学芸文庫)
野崎 昭弘
筑摩書房
数学ガール ゲーデルの不完全性定理1 (MFコミックス アライブシリーズ)
結城 浩
メディアファクトリー
空と無我 仏教の言語観 (講談社現代新書)
定方 晟
講談社

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