生後わずか12日の長男を、41歳の母親が風呂で溺死させたという痛ましい事件が起こりました。
育児に悩み、将来を悲観して無理心中を図った、とか。
しかし乳幼児ではない大人は、どんなに意思が強くても風呂場で入水自殺できるものではありますまい。
息苦しければ顔を上げてしまうでしょう。
夫が風呂場にいる妻と息子の遺体を見て、消防と警察に連絡したとか。
わずか生後12日で育児ノイローゼのために赤ちゃんを殺害するとはにわかには信じがたい事実ですが、事実は小説より奇なり、世の中なんでもおこるのですねぇ。
そういえば夫婦で酔っぱらって銃を使った、ウィリアム・テルごっこ、をやっていたところ、誤って夫が妻を射殺してしまった、という笑えない事件が昔米国で起こりました。
しかも犯人が、ニュー・ウェーブSFの旗手にしてビート・ジェネレーションの代表、ウィリアム・S・バロウズであったことから、センセーションを巻き起こしました。
バロウズといえば、ヤク中でアル中でゲイ寄りのバイセクシャル。
代表作「裸のランチ」など、良く言えば実験的、悪く言えば意味不明。
クローネンバーグ監督が「裸のランチ」を映画化した時、あまりにも分かりやすくて腰が抜けました。
主人公の小説家に悪態をつくタイプライターが強烈な印象を残し、当時ワープロ全盛だったため、見るワープロ見るワープロ、全てに分厚い口がついて見え、しかも口角泡を飛ばしていて、辟易した憶えがあります。
稀代の不良作家、バロウズも、さすがに殺人罪で逮捕されるとは思っていなかったでしょう。
泥棒で男娼だったジャン・ジュネや、ゲイのオスカー・ワイルドは何度も逮捕されていますが、殺人は犯していません。
釈放されるとボーイフレンドと長い旅に出て、「おかま」を書きあげたりしました。
米国におけるバロウズへの畏怖と熱狂は、日本で言えば誰にあたるんでしょうかねぇ。
埴谷雄高だと、真面目にすぎますかね。
でもカルト的なファンがいるという意味で近いかもしれません。
志向する方向性はまるっきり違いますけど、分けわからんと言う意味では同じかも。
生後12日の我が子を殺害する母親、愛する妻を誤って射殺する小説家。
海江田万里大臣ではありませんが、人生不条理ですねぇ。
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デイヴィッド・クローネンバーグ,ウィリアム・バロウズ | |
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鮎川 信夫 | |
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