乙女の港

文学

 先週、弥生美術館で「少女の友」展を観たことはブログに書きました。
 歴代「少女の友」に連載された小説でも、最も人気が高かったという、川端康成の「乙女の港」を読みました。川端作品は多くが文庫化されていますが、戦前に多く発表された少女小説は絶版が多く、やむなく、図書館で全集を借りるほかありませんでした。

 戦前の女学生の間で流行したS(sisterの略)と呼ばれる女学生同士のプラトニックラブを描いたものです。
 その言葉遣いなど、現代から見ると違和感がありますが、お話としてはなかなか興味深いものです。
 当時はすべて別学でしたし、良家の子女が恋愛沙汰など許されなかったでしょうから、その代替として流行したものと思われます。男子校でも、似たようなものだったでしょう。古来わが国では、同性愛は普通のことでしたからね。
 昭和12年の発表ですから、今から思えば、わずか四年後には、米英蘭との戦が始まり、少女たちも時代のうねりのなかに放り込まれ、牧歌的な生活はできなくなるのだと思うと、切なくなります。

 川端康成は女性を描くのが得意で、よほどの女好きだったと思われます。「眠れる美女」などは、きりきりするような、究極の、老人の性と若い女性の輝く美しさへの憧憬に満ちていますね。
「女を見るときには、なめるように凝視しろ」とか言ったとか。
 大体において芸術家は美しいもの、輝くものが好きですね。そうであれば、女好きは芸術家の性でもありましょうか。

完本 乙女の港 (少女の友コレクション)
中原 淳一
実業之日本社

 

眠れる美女 (新潮文庫)
川端 康成
新潮社