今日は五千円札に描かれている新渡戸稲造の忌日なんだそうで。
米国で「日本では宗教教育をしていないそうですが、それでどうやって道徳を教えるのですか」と問われ、世界的なベストセラーになる「武士道」を英語で書いたそうですね。
その後国際連盟事務次長などを歴任して、1933年の今日、わが国の軍国化と共産主義思想の流行を憂いながら亡くなったと聞きます。
わが国の道徳の源泉を武士道に見たというのは慧眼ですねぇ。
わが国では封建制の昔から、職人なら職人、百姓なら百姓、商人なら商人、それぞれがそれぞれの立場で道というべき道徳律をもっていました。
それを端的に表したのが「武士道」なのでしょう。
では今、わが国の国民が拠って立つべき道徳律とはどういうものなのでしょうね。
今も日本人は礼儀正しく、規律を重んじるとされています。
震災などの際に暴動や略奪が起きないことを世界は驚きの目を向け、賛嘆しますが、私たち日本人にしてみれば、なんだって悲惨な目にあっている上に、それをさらに悪化させる暴動や略奪が起きるのかが不思議です。
幕末、隅田川花火大会を見物に行った欧米人が、「わが国であれば間違いなく暴動が起きるような混雑のなかで、日本人は笑顔で譲り合い、規律を保っていた」と驚き、同時に日本が近代化したなら世界の脅威になるであろうことを予言し、それは見事に当たりました。
それらのことを考えると、今の日本人にも規律を重んじるという道徳律が染み込んでいるように思います。
それは儒教や仏教など、わが国の精神文化を形成する重要な思想体系とは別次元で、日本人の魂の奥深くに根付いているもののように感じます。
ではそれは何なのか。
国民性と言ってしまえばそれまでですが、その国民性がどこからわき出てきたのか、私にはわかりません。
多分誰にも分からないでしょうねぇ。
色々と屁理屈をつけることはできるでしょうが。
多分それは永遠に解明されない、民族性というものが持つ不思議な集合無意識なのでしょうねぇ。
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矢内原 忠雄 | |
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