日々の暮らしを振り返ると、人間の暮らしは奴隷のようだと感じることがあります。
少々体調が悪くても、朝から晩まで職場に拘束されますから。
でも本当の奴隷と違うのは、主は自分であること。
自分が生きるために、自分の意志で働いているのであって、雇用主を選ぶのは自分です。
子どもの頃、「ルーツ」というドラマを観ていました。
アフリカの黒人が奴隷商人に捕えられ、米国に連れて行かれて奴隷として働き、同じ黒人奴隷と結婚して子どもをもうけ、孫にも恵まれて人生を終える大河ドラマです。
最終回、スーツできめた黒人作家が出てきて、「これは自分の祖先の物語だ」、と語りだした時は異常な迫力に圧倒されました。
よく覚えているのは、主人公のクンタ・キンテが主に逆らった罰として、片足の足首を切られるか、陽物を切られるか、どっちか選べ、と言われて、彼は迷わず足首、と応え、男の私は、そりゃそうだよねぇ、と思ったことですねぇ。
宦官のようにはなりたくありません。
世界史の中でもアメリカの黒人奴隷売買はもっとも大規模でシステマティックなものだったようです。
西アフリカの有力な黒人部族がヨーロッパ人から買った鉄砲を武器にアフリカ内陸部の弱小部族を襲って奴隷市場に連行し、ヨーロッパ人がヨーロッパの製品を持って西アフリカの奴隷市場で奴隷を仕入れ、アメリカ南部に運んで大規模農場主に奴隷を売りつける。
大規模農場主はなるべく奴隷の購入費用を抑えるために奴隷同士で結婚させ、その子、孫を新たに奴隷にするとともに、家庭を持たせることで奴隷に人間的喜びを感じさせ、反抗しないように手なづける。
じつによく出来たシステムです。
ヨーロッパやアメリカの白人が築き上げた悪魔のシステムですねぇ。
儲け話に目がないのは古今東西同じみたいです。
この悪魔の制度、産業革命によって単純労働の多くが機械化されると、流行りの人権思想をまとって奴隷制度を廃止に追いやることになりました。
哀れなのは、奴隷制度撤廃に最も強く反対したのは当の黒人奴隷たちだったという話です。
第一の理由は自由にしてよいと言われたら、いわゆる解雇みたいなもので、生活の糧を失うわけですし、家族ぐるみで養われている黒人奴隷は白人の主一家と精神的な絆ができていた場合もあるでしょう。
泣かせますねぇ。
ブルースが哀調を帯びているのは、黒人奴隷の嘆き節が発祥だからでしょうかねぇ。
わが国では卑弥呼の時代に奴隷がおり、その後も鎌倉幕府が禁じるまで、規模は小さくても奴隷売買が行われていたようです。
幕府が禁じても、飢餓状態に陥ると自ら望んで奴隷になる者や、娘を売り飛ばす者が続出したようです。
飢え死にするよりは奴隷になったほうがよいということでしょうか。
昭和維新を唱えて武闘派の青年将校たちが決起した2.26事件の背景には、昭和になっても貧しさゆえに身売りしなければならない娘たちが多数いたこともあるようです。
そして、今。
売春する者はたくさんいるようですが食うに困って、という話はあまり聞かないですね。
一昔前流行った援助交際なんて、子どものお小遣い稼ぎという感覚です。
近頃では、臓器移植が目的の人身売買が行われているやに聞き及びます。
時代は進んで、技術が進歩し、思想が高度化しても、人間、儲かると思うと他人のことなんてどうでもいいんですねぇ。
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