共同参画

社会・政治

 近頃では婚活という言葉を耳にしない日はありません。
 結婚紹介会社だけではなく、野球の席をペアで売り出せば婚活シート。結婚詐欺は婚活詐欺。お相手探しの活動をブログにすれば婚活ブログ。
 誠におめでたい社会です。

 一方、30になっても40になっても結婚しない未婚率は、依然として高水準です。35歳の男性未婚率は35%を超え、女性でも25%。
 少子化はますます進んで、最も重要な社会資源である人間が減ってきています。
 事態はすでに、憂慮すべき段階に達しています。

 婚活という言葉の生みの親である山田昌弘中央大学教授の最新刊、「『婚活』現象の社会学」によれば、結婚したい人の比率は変わっておらず、理想の相手がいれば明日にでも結婚したい、という人はかなり多いそうです。
 
 ではどうして結婚しないのか。
 
 理由は簡単。理想の相手がいないからです。
 
 女性から見た理想の相手は、専業主婦になっても安心して暮らせるだけの収入がある男性。
 しかしバブル崩壊後20年、日本は沈みっぱなしで、それだけの収入がある男性が激減しています。
 そして山田教授がインタビューする未婚女性は決まって、「出会いがない」「いい相手がいない」「いい人だと思ったら、結婚していた」と嘆くそうです。 
 ある結婚相談所の職員によると、女性の母親が口出しする例が多く、「宮様連れてきても断るわよ、きっと」なんて陰口をたたくこともあるとか。
 
 一方男性は自分の収入では妻子を養っていけない、と悲観し、「高収入を稼げるようになったら結婚する」とか、「低収入の自分を好きになってくれる人が現れたら結婚する」と言い訳するそうです。

 婚活の多くが、失望しか生まない、というのは皮肉な現実です。
 元々無理な高望みをしているのですから当然ですが、世の中には高給取りの男は数%しかいないし、低収入の男と結婚しようと思う女は滅多にいないのです。
 しかし婚活の最大の意味は、失望にあるのかもしれません。
 厳しい現実を知り、高望みをやめるきっかけにはなるでしょう。
 待っていても白馬の王子様は現れず、普通の男さえ現れない。
 どんなに頑張ってもたいして給料は上がらず、低収入でもいいからあなたと結婚するわ、なんて女は現れない。
 いつまでも、高収入で気も合い、外見も良い相手を求めて独身を続けるか、適当な相手とくっつくか。
 昔のお見合い結婚は、条件がそこそこ合えば、嫌いではない程度で結婚していたので、ほとんどの人が家庭を持ったのでしょう。

 私は収入のミスマッチをクリアするには、共働き、共家事しかない、と考えます。
 もはや男が稼いで女が家事育児、という時代は、日本では終焉を迎えつつあるでしょう。
 男も女も稼いで、女も男も家事育児に従事する。
 男は女を差別せず、女は男に頼らない。
 二人で稼げば、高給取りの男一人分くらい稼げます。
 稼ぐ能力は、個人差はありますが、性差はないものと考えます。家事育児も同様。
 男は男らしく、女は女らしく、という呪縛からいい加減逃れましょう。
 その人らしく、で良いのです。
 
 それには男女とも、性別による社会的な役割分担はもはや存在しないことを肝に銘じることが大切です。
 そして日本社会全体が、男も女も収入を得、家庭を守り、地域の事業に参加するのが当然だと、意識改革する必要があります。
 そういう社会になれば、婚姻という制度自体が溶けていき、自己の選択としての生涯独身も事実婚も許容され、人間本能の結果として、婚外子を含めて人口減に歯止めがかかるのではないでしょうか。
 内閣府男女共同参画局には、気合をいれて奮励努力願いたいものです。
 

「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま
山田 昌弘
東洋経済新報社
「婚活」時代 (ディスカヴァー携書)
山田 昌弘,白河 桃子
ディスカヴァー・トゥエンティワン
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