兵士

社会・政治

 『早うくたばった兵隊を見ても「楽をしたでいいな」と思うだけだった。』

 『ハエを叩いてね、ハエを食ったやつもいたもんな。動けんでおると、ハエがいっぱいたかってくるやん。叩くだろう、ほいで食っちまう。ああいうの、「餓鬼」っていうんやないかな。』

 『
敵さんが倒れると、その死体を引きずっていって、焼いてね、食べちゃったけどね。狂っていたのか、わからんような状態。』

 『
俺が死んだら食べてくれとは何と情けない話だ。蛆虫共に食われるよりも戦友に食べられるほうが良い。』

 
上記は「証言記録 兵士たちの戦争」4巻からの引用です。

 ガダルカナル島で補給を断たれ、それでも拠点を死守せよとの命令が出、死を待つような絶望的な戦闘状況を当時の兵隊から聞き取り調査したものです。
 上記のような凄惨を極める証言がびっしりと埋まっています。
 
 兵隊にとられても内地勤務だったり、朝鮮半島などの戦闘がない場所に配置された人もいれば、生き地獄のような過酷な戦場に送られた人もいるでしょう。
 これは、現在の会社や役所などの組織でも、人事異動で悲喜劇が繰り返されるのと一緒です。
 
 このような書物を前にして、感想など何もありません。
 私はただ、沈黙するばかりです。
 
 ただ、元兵士たちが、当たり前のことのように淡々と語るその口ぶりに、殺し合いという極限状況にあっても、それに適応してしまう人間の適応能力の高さに驚愕します。

 おそらく残虐な行為も、命令だから仕方ない、と思えば、簡単に行えるのでしょう。
 南京やアウシュビッツ、ソンミ村がそうであったように。
 多分私も、そして周りにいる人々も、そういう状況に追い込まれれば、虐殺もし、人肉も食うのでしょう。
 自分の中にある残虐性を自覚しなければならない、と痛感します。


証言記録 兵士たちの戦争〈1〉
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証言記録 兵士たちの戦争〈2〉
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証言記録 兵士たちの戦争〈3〉
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証言記録 兵士たちの戦争<4>
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