冥途の寒さ

文学

 今朝は馬鹿に冷えました。
 冬を迎えたことを実感させられます。
 そういえば通勤の車を運転していても、いつもより車が多いように感じました。
 忙しい季節なのでしょうねぇ。

 私はと言えば、なんだか気をもむことは多かれど、それほど忙しいとは感じていません。
 
 最近はまっている久保田万太郎の冬の句をいくつか。

 粥喰うて 冥途の寒さ 思ひけり

 粥を食うことなどほとんどありませんが、冥途の寒さを思うはんて、不気味な迫力があります。
 そこはかとなく漂う厭世的な感じがよろしいようで。 

  飲みくちの かはりし酒よ 冬籠

 冬に自宅で籠っていれば、酒の味が変わるのも当然でしょう。
 これをかはりし、として、うましとしないところにこの人の真骨頂があるのでしょうね。

 炭つぐや 雪になる日の ものおもひ

 これから雪が降ろうという日に暖房の炭を入れているのでしょうね。
 今はエアコンのボタンを押すだけですから、気楽なものです。
 もっとも私の実家はお寺で、古い建物だったせいか、冬は底冷えがし、エアコンはもっぱら冷房用で、暖房には石油ストーブを使っていました。
 チュルチュルポンプで灯油を入れるのがひどく億劫だったことを思い出しますねぇ。

 雪に慣れない首都圏のサラリーマンにとって、雪は通勤の足を直撃する一大事。
 お休みの日ならともかく、平日の雪にものおもひに沈めるなんて、羨ましいくらいの贅沢です。

 私は冬のぴりぴりした感じが清潔を思わせて、この過酷な季節を割合好んできました。
 今は上下とも保温性の高い下着を着用して、この季節を楽しむようになりました。
 年をとると寒さが堪えると言いますが、まだあったか下着着用でしのげる分、若いのかもしれませんねぇ。

 冬には過酷さの代わりに、独特の風情があって、私たちを楽しませてくれます。
 これを楽しまなければ損というものです。

久保田万太郎の俳句
成瀬 桜桃子
ふらんす堂

 

俳句の天才―久保田万太郎
小島 政二郎
彌生書房

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