小池真理子先生の「冬の伽藍」を読み終わりました。
![]() | 冬の伽藍 (講談社文庫) |
小池 真理子 | |
講談社 |
美しい背徳、激しい恋情、そして肉欲。
美しくも残酷な物語の世界に酔いました。
三年前夫を交通事故で亡くした28歳の悠子。
彼女は夫との思い出が詰まった東京を捨てて軽井沢の小さな診療所で薬剤師として働き始めます。
診療所の医師は、やはり三年前に妻を亡くした科目な義彦。
義彦は世捨て人のように、他人との接触を絶って暮らしています。
そして、義彦の義父で東京でクリニックを開業する英二郎。
英二郎は軽井沢に巨大な別荘を持ち、たびたび軽井沢診療所を訪れます。
英二郎は異常なまでの女好きで、悠子を誘惑します。
しかし、悠子と義彦はいつしか互いに惹かれあい、恋に落ちています。
義彦との恋におぼれながら、英二郎の誘惑にも惹かれる悠子。
義彦の妻は自殺しており、義彦は英二郎が妻を手込めにしたため、それを苦に自殺したのだと信じています。
英二郎が妻にしたのと同じように、悠子を誘惑していると知った義彦は、激情に駆られ、義父を殺害してしまうのです。
刑務所に収監された義彦と悠子は手紙のやり取りを始めます。
しかし、義彦は出所後も悠子と会うことを拒み続け、ついには失踪してしまいます。
義彦を慕い続ける悠子。
二人は会うことも、手紙を交わすこともせず、10年以上の歳月が流れてしまいます。
悠子は重い病気にかかり、それを知った義彦は悠子と会うことを決意。
懐かしい軽井沢で、二人は再会を果たすのです。
15年に及ぶ長い恋の物語が、ゆったりと、しかし激しく進行していきます。
私は平凡な職場結婚で、同居人との恋愛中も、それほど激しく相手を求めた記憶がありません。
そのため、この作品に描かれるような激しい感情とは無縁のまま生きてきました。
人が人を求め、恋うる感情の強さに圧倒されました。
名作「恋」と並ぶ、小池先生の代表作と言ってよいのではないでしょうか。
ご一読をお勧めします。
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小池 真理子 | |
新潮社 |