告白

映画

 ついこの前ロードショー公開されて大ヒットを飛ばした話題作「告白」が早くもDVD化され、早速レンタルで観ました。

 一言でいえば、圧巻でした。
 近来まれにみる名作です。

 中学一年生、三学期の終業式。
 教室で、松たか子演じる担任教師が、ある告白を始めます。

 それは、プールに転落して事故死したとされた教師の4歳の娘は、このクラスの生徒二人によって殺害された、という衝撃的なものです。
 教師は二人の個人名を出さず、A.Bと呼び、事件の詳細を語ります。
 当然、生徒たちは誰がAで誰がBかすぐにわかってしまいます。
 教師は、少年法に守られた犯人を告発する気はなく、復讐のために二人の牛乳にエイズ患者の血液を混ぜた、と言うと、クラスはパニックに陥ります。
 
 続いて、Aの告白。
 Bの告白。
 Aの彼女の告白。
 Bの母親の告白とあって、最後に女教師が再び告白します。

 動物虐待を繰り返し、殺人願望を持った、母親に捨てられたがゆえに母親を理想化して生きるA。
 青酸カリで家族全員を殺害した同世代の犯人を崇める優等生でAの理解者でもある彼女。
 二人の幼い恋がサイド・エピソードとして語られますが、13歳の少年少女はあまりにストレートで悪意に満ちた感情表現を行い、二人はそれぞれの形で破滅してしまいます。
 Bはひきこもりになり、母と二人だけの家庭で煮詰まっていき、この母子にも破滅が訪れます。

 物語の構成としては、芥川龍之介の小説「藪の中」黒澤明監督が映画化した「羅生門」とよく似ています。

 一つの出来事を複数の目線からかわるがわる語らせ、人間の多様性を描きだし、この世に正解は存在しないことを暗示しています。

 灰色がかった重苦しい映像が美しく、少年少女たちの幼稚な暴力性と、女教師の計算されつくした復讐の対比が見事です。

 ラスト、Aは生徒全員の前で作文コンクールで優勝した作文を読んだのち、体育館に仕掛けた手製の爆弾を爆発させ、おのれもろとも生徒たちを大量に殺害し、犯罪史に名を残そうと企みます。
 しかし、爆弾は女教師の手によってAの母親のオフィスに運び込まれていたのです。
 いくらボタンを押しても体育館には何も起きません。
 そして、自ら作った爆弾で、自らボタンを押して憧れの母親を殺害してしまったことを知ったAは腹の底から意味不明の咆哮を放ちます。
 Aの絶望はいかに深かったでしょう。
 今日で凶悪犯罪のスーパーヒーローとして終わるはずだった人生が、絶望とともに長く続くことを知らしめられたのですから。

 重い題材を扱っていますが、テンポよく、飽きさせません。
 これは是非観ていただきたい一作です。

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