咲きて桔梗の寂しさよ

文学

  今日は曇り時々雨。
 すっかり涼しくなりました。

 お彼岸を過ぎれば本格的な秋。
 お彼岸までは、まだしばらくありますが、朝夕は確実に涼しくなりました。

 かたまりて 咲きて桔梗の 寂しさよ

 久保田万太郎の句です。




 
 この人の句には、メランコリーというか、どこか憂愁の味わいを感じさせられます。

久保田万太郎全句集
久保田 万太郎
中央公論新社

 春愁秋思、という言葉がありますね。
 三省堂四字熟語辞典には、

 の日にふと感じる物悲しさと、秋にふと感じる寂しい思い。よい気候のときに、なんとなく気がふさぐこと。また、いつも心のどこかに悲しみや悩みがあること。▽「春愁」は春の日のもの思い、春に感じる哀愁、「秋思」は秋の寂しいもの思いの意。

 とあります。
 もともとは、白居易(白楽天とも)「陵園妾」という漢詩に見られる言葉です。

白楽天 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 (角川ソフィア文庫)
下定 雅弘
KADOKAWA

 それにしても、過ごしやすい季節に寂しい物思いに沈むのはなぜでしょうね。

 なぜかはともかく、実感として、春の憂いや秋の物思いというもの、物心ついたあ頃からなんとなく感じてはいました。

 四季のある風土で生まれ育つと、自然とそういった感情が身に付くのでしょうか。

 私は春愁のほうがひどくて、春はなんとも気分が沈みますが、愁思はあんまり感じません。

 秋の物思いをも楽しみながら、これからの季節を過ごせたら、と思わずにはいられません。