喫煙

仕事

 私は愛煙家ですが、じつは喫煙するようになったのはわりと遅く、27歳くらいからです。
 きっかけは、職場で分煙が進んだこと。
 分煙が進んだ結果、喫煙者は煙草を吸うということを大義名分に、堂々と仕事をさぼれるのです。
 しかも喫煙所では和やかに話がはずみます。
 これを見て、吸うしかない、と思ったわけです。

 煙草を吸わずによそでぼうっとしていたら見咎められてしまうのに、あの細い葉っぱをくるんだ棒に火をつけて口にくわえるだけで、まるで水戸黄門の印籠のように、許されてしまうのです。

 しかも最近は禁煙がブームで、喫煙者は被差別民みたいなものですから、差別を受けている者同士の連帯感みたいなものが生まれます。

 体には悪いのかもしれませんが、精神衛生にはきわめて良好な影響をもたらしてくれます。
 仕事帰りにちょっと一杯ということが無くなり、喫煙所は短時間とはいえ貴重なコミュニケーションの場になりました。

 某商社の支店長が、面白いことを言っていました。
 職場恋愛が激減したのは、女性社員によるお茶くみがなくなってからだ、と言うのです。
 男女雇用機会均等法が施行され、女だからお茶を淹れろというのは男女差別だというわけで、それは全くそのとおりなので、女性社員によるお茶くみを復活させろなどと言う気は毛頭ありません。
 むしろ私は冷たい飲み物が好きなので、朝出勤すると飲みたくもない熱いお茶を出されるのは苦痛で仕方ありませんでした。

 それはそれとして、妙齢の女性とお近づきになりたい男性社員、もしくは有能な男性社員とお近づきになりたい女性社員にとっては、貴重な接触の場だったのでしょうねぇ。
 お茶を淹れてもらえば一言くらいお礼を言うでしょうからねぇ。

 仕事帰りの一杯にしても、喫煙所での短い会話にしても、お茶くみによる接触にしても、どれも合理的とは言えませんが、人間は感情の動物であり、そんなちょっとしたことが円滑な人間関係に役立つんでしょうね。

 面倒くさい話ですねぇ。

 私自身、かつては飲み会といえば必ず顔を出し、飲みに誘われれば断ったことなどありませんでしたが、精神障害を発症してから、忘年会や暑気払いはもちろん、歓迎会も送別会もキャンセルしています。

 体力が持たないのですよ。

 仕事が終わってからの付き合い酒なんて、もう無理です。
 それよりすっ飛んで家に帰り、ひとっ風呂浴びてゆっくりちびちび焼酎のロックをやるか、あるいは早々に床についてしまうほうが、よほど楽しいですねぇ。

 君子の交わりは淡きこと水のごとし、と「荘子」にも載っています。

 濃い人間関係はまっぴらですねぇ。


老子・荘子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)
野村 茂夫
角川書店

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