噂の女

文学

 午前中、雨がぱらついていたので、読書を楽しみました。
 読んだのは、奥田英朗「噂の女」です。

 糸井美幸という魔性の女をめぐる連作短編集で、重層的に物語が積み上げられ、最初のうちは大した女ではないと思わせておきながら、連作が進むにつれてとんでもない女であるらしいことが仄めかされて、唐突に終わります。

 これはあくまで女糸井美幸をめぐる物語であり、糸井美幸の物語ではありません。

 岐阜県の田舎町を舞台に、狭い町ならではの、濃密で因習的な人間関係を背景に、貧しい境遇から抜け出すべく、女の色香を武器に奮闘する様が、あるいは友人の口から、あるいはパトロンの代議士の事務所に勤める秘書の口から、また、サラりーマンから、零細企業の社長から、語られます。

 最初は適当に連作を連ねているのかと思わせておいて、じつは緻密な計算のもとに紡ぎだされた物語だと判明するという仕掛け。

 文章はあまり品がありませんが、テンポが良くて読みやすい。

 この作者の作品を読むのは初めてですが、他のものも読んでみたくなりました。

噂の女 (新潮文庫)
奥田 英朗
新潮社

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