地下の国

映画

 超低予算ながらA級ホラー、という触れ込みの「人喰いトンネルMANEATER-TUNNEL」をDVDで鑑賞しました。
 
 トリシアの夫、ダニエルは7年前に謎の失踪を遂げ、トリシアは失意の日々を送っています。
 そんなトリシアの元に、5年ぶりに妹のキャリーがやってきます。
 トリシアはこともあろうにダニエルの行方を捜査する担当刑事との間に子どもをもうけ、現在妊娠中。
 ダニエルへの罪悪感とダニエルが失踪したままであることへの不安から、ダニエルの幻覚に悩まされています。
 キャリーは元麻薬中毒でしたが、今は更生し、姉を支えようと一緒に暮らし始めます。
 トリシアとキャリーが住む街には歩行者専用のトンネルがあり、よくそこで人が失踪しています。
 ある日、突然、夫のダニエルが帰ってきます。
 痩せこけ、体中に暴行の跡を残して。
 彼は何を聞かれても、「下にいた」とか「やつらが追ってくる」しか言いません。
 トリシアが外出中、ダニエルは再び失踪します。
 その場に居合わせたキャリーによると、何者かが壁から出てきて、ダニエルを連れ去ったとのこと。
 当然、警察も姉のトリシアも元ジャンキーのキャリーが言うことに取り合いません。
 キャリーはインターネット等で過去のトンネル付近での失踪者の事例を調べ、同時に世界の伝説などにも目を通し、地下にこの世ならぬ者の国があり、密かに人間や動物をさらっては使役しているらしい、という仮説を打ち立てます。
 もちろん、そんな説は一笑に付されてしまいます。
 ついにトリシアも地下の者に連れ去られ、キャリーは単身トンネルに乗り込み、「私と交換」しなさい、と地下の者に呼びかけ、誰と交換されるわけでもなく、地下の者に連れ去られてしまいます。

 この映画の優れている点は、いかに見せるか、ではなく、いかに見せないか、に徹底的にこだわったことでしょう。
 地下の国の存在もキャリーが唱えているだけで定かではなく、人をさらうシーンですら、地下の者の姿は映されません。
 ただ、引っ張られていく人物の恐怖の表情が映し出されるだけです。
 唯一、巨大な虫のような姿をしているらしいことが、数日間だけ戻ったダニエルから断片的に語られるだけです。

 神とか悪魔とかいう話題を持ち込まないことも好感が持てます。
 仮に人智の及ばぬ地下世界で巨大な虫のような知的生命体が生活し、生活の便のために地上の動物をさらっていたとしても、それは悪ではありません。
 もちろん、人類がその事実を知れば、同族を守るため、必死で地下の国を破壊しようとするでしょうが、それは人間に捕獲されようとする馬が暴れまわるのと同じこと。
 人間が牛や馬を使役することとなんら変わりは無いでしょう。

 さらに言うなら、決定的なシーンが無いため、それらはキャリーの妄想であって、ダニエルもトリシアもキャリー自身も、単にどこかへ行っただけかもしれない、という可能性をも示唆します。

 「エイリアン」のようなどろどろぐちゃぐちゃの怪物が出てくるアクション系ホラーに飽きた方にお勧めの、静かで、しかし怖ろしい気配と緊張感に満ちたホラーの佳作です。

人喰いトンネル MANEATER-TUNNEL [DVD]
マイク・フラナガン
角川書店


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