埋火

文学

 今日からやっと職場の暖房が入りました。
 体が楽ですねぇ。 

 うづみ火や 我かくれ家も 雪の中

 私が敬愛する与謝蕪村の冬の名句です
 私はこの句を、古今東西のあらゆる句の中で、最も偏愛しています。

 職場に暖房がついて、この句を思い出しました。

 まだ雪は先の話ですが、寒さに弱い私には、すでにしっくりくる感じです。

 他に蕪村の句で、

 埋火や 終には煮ゆる 鍋のもの

 という、こちらも冬籠りの心地良さを詠んだものがあります。
 こちらもなかなか良い感じ。

蕪村俳句集 (岩波文庫)
尾形 仂
岩波書店

 

 同じ埋火という季語を使っても他の俳人だとこうはいきません。

 埋火も 消ゆや涙の 煮ゆる音

 こちらは俳聖、松尾芭蕉の句。
 なんだか湿っぽくてもう一つです。

芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
雲英 末雄,佐藤 勝明
角川学芸出版

 埋火の 夢やはかなき 事ばかり

 正岡子規の句です。

 これは近代人らしい懊悩が感じられて、それはそれで良いですが、必ずしもわが国の伝統に合致しているとは言えません。

子規句集 (岩波文庫)
高浜 虚子
岩波書店

 冬は日の出が遅くて日の入りは早い、平たく言えばお日様を拝める時間が短いわけで、夕陽が嫌いで午前中の光を好む健康人である私には辛い季節です。

 せめて帰宅したなら、強い酒をあおって意識を変容せしめ、寒風吹きすさぶ寒い夜、埋火で暖められた愛しのわが家で過ごす夜を楽しみたいものだと思います。

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