夏の句

文学

 暑い日が続くと、外に出るのも勇気がいります。

 
炎天へ 打って出るべく 茶漬け飯

 
国文学者、 
川崎展宏の句です。
 打って出る、という表現が、ひどい暑さを物語っていますね。
 茶漬け飯は、冷たい茶漬けとみました。
 冷たい茶漬けで水分を補給し、体を冷やし、飯のパワーで一気に炎天をすすんで行く、勇ましいような滑稽なような句ですね。

 次に夏らしく不気味な句。

 生者より 亡者に 西瓜ごろごろす  小内美邑子

 向日葵や 信長の首 切り落とす   
角川春樹

 
亡者は死してなお、強い食欲を持っているのでしょうか?夏は魑魅魍魎が跋扈する時期です。そんなこともありましょう。

 日の出の勢いの絶頂で命を絶たれた信長。夏の盛りを、夏の花の王として咲き誇る向日葵を、信長の首にたとえているのでしょうか。
 どちらも、じんわりといやな汗が出るような気味悪さがあります。

 今度は軽く、黛まどかの句です。

 
兄以上 恋人未満 掻氷

 水着選ぶ いつしか彼の 目となって

 女性らしい句ですね。
 私は俵万智の短歌はどうにも受け付けないのですが、黛まどかの俳句は瑞々しくて良いと思います。
 情念の強さの違いでしょうかね。

 暑い暑いと愚痴をたれてばかりの私ですが、少しは先人をみならって、夏らしい句をひねってみましょうか。
 みなさんに披露できるような句はきっとできませんが。

角川春樹句会手帖
佐藤 和歌子
扶桑社

 

季語別川崎展宏句集
川崎 展宏
ふらんす堂

 

あなたへの一句
黛まどか
バジリコ