夏籠や

文学

 いよいよ猛暑がやってきました。
 職場も自宅もエアコンが効いているうえ、通勤も車なので、正直、ほとんど暑さを感じない夏が、20年ばかり続いています。
 そういう意味では、現代の内勤者には、夏らしい夏は無いのかもしれませんね。

 そういえば、夏の光に照らされて、毎日弁当を入れているバッグ、大分汚れていることに気づきました。
 なんだか侘しい安サラリーマンを地で行っているようで、侘しくなりました。

 夏籠や 月ひそやかに 山の上

 村上鬼城の句です。
 夏籠とは、夏のバッグ。
 今風に言うならトートバッグということになりましょうか。

 涼しげな夏籠と、妖しい光を放つ月の光との対比が面白いですねぇ。
 でもあんまり強烈な暑さは感じられないというか、どちらかと言えば涼しげでさえあります。

 わが国は夏が過酷で、建物にしても夏を快適に過ごせるように作られていますが、一方夏は儚くもあります。
 冬のようなしつこさは無く、むしろすぐに秋になってしまうイメージです。

 それが夏に激しくも物悲しげな彩りを添えるのかもしれません。