昨日このブログに書いた「ホスピス」では、男が自分をいじめたグループ、中でも岡惚れしていた女を、生霊となって祟りをなすさまが描かれていました。
恋情が叶わないとき、可愛さあまって憎さ百倍とばかり、相手を恨むのは洋の東西、時代を問わず行われ、今現在も各地で行われていることでしょう。
六条御息所は生あるうちは生霊となって、死して後は死霊となって、光る君をめぐる女たちに害をなしますが、最初に害を与えた女は夕顔でした。
他の巻と違って夕顔に祟る霊が六条御息所だとははっきり書かれていないため、逢瀬を楽しんだ荒れた屋敷の地霊だとか、諸説ありますが、私は素直に、六条御息所の生霊デビューの巻と読みたいと思います。
夕顔の巻は、「源氏物語」全体を俯瞰すると、別編というか、大きなストーリーとはあまり関係のない、光る君の若き日のエピソードという趣に感じられます。
そして意外なほど、この巻は人気があるのですよねぇ。
まず、夕顔が可憐で頼りない、いかにもなお姫様風に描かれているのに、どこの何者だかはっきりせず、光る君も自分の氏素性を隠して密会を重ねるという、ミステリアスな雰囲気。
そして初めて二人きりで外出し、荒れた屋敷で一夜をともにするのですが、物の怪に憑かれて呆気なく夕顔が死んでしまうはかなさ。
光る君のライバル頭中将と結ばれ、別れたことや、一人娘がいたこと、雨夜の品定めで頭中将が常夏の女として源氏らに語っていたことなどが後になって判明し、知らずに契りを結んだことが悔やまれるようで、それでいて亡くなった夕顔はやっぱり恋しい、みたいな、どこまでも都合のよい光る君に軽くいらつきます。
「男はつらいよ」シリーズを観ていると腹が立ってくる、と職場の後輩は言いました。
「源氏物語」を読んでいると腹が立ってくる、と知りあいの女が言いました。
私はどちらも特別に腹が立つことはなく、興味深く鑑賞しています。
でももし光る君のような高い地位と美貌を生まれながらに与えられたら、やっぱりいやなやつになっちゃうんじゃないでしょうかねぇ。
現代的な性規範から言えば、とんでもない女たらしでしょうねぇ。
そんな光る君の物語のなかでも、「夕顔」は独特の純愛めいた清々しさがあって、今もなお、主に男に人気があるのでしょうねぇ。
ちなみに女性に人気があるのは六条御息所だとか。
女は怖いですねぇ。
![]() | 源氏物語 (まんがで読破) |
紫式部,バラエティアートワークス | |
イーストプレス |
![]() | 源氏物語が面白いほどわかる本〈上〉 (中経の文庫) |
出口 汪 | |
中経出版 |
![]() | 源氏物語が面白いほどわかる本〈下〉 (中経の文庫) |
出口 汪 | |
中経出版 |
![]() | 源氏物語―付現代語訳 (第1巻) (角川ソフィア文庫) |
紫式部,玉上 琢弥 | |
角川書店 |
![]() | 源氏物語―付現代語訳 (第2巻) (角川ソフィア文庫) |
紫式部,玉上 琢弥 | |
角川書店 |
![]() | 源氏物語―付現代語訳 (第3巻) (角川ソフィア文庫) |
紫式部,玉上 琢弥 | |
角川書店 |
![]() | 源氏物語―付現代語訳 (第4巻) (角川ソフィア文庫) |
紫式部,玉上 琢弥 | |
角川書店 |
![]() | 源氏物語―付現代語訳 (第5巻) (角川ソフィア文庫) |
紫式部,玉上 琢弥 | |
角川書店 |
![]() | 源氏物語 第6巻 若菜上~若菜下―付・現代語訳 |
紫式部,玉上 琢弥 | |
角川書店 |
![]() | 源氏物語―付現代語訳 (第7巻) (角川ソフィア文庫) |
玉上 琢弥 | |
角川書店 |
![]() | 源氏物語―付現代語訳 (第8巻) (角川ソフィア文庫) |
紫式部,玉上 琢弥 | |
角川書店 |
![]() | 源氏物語―付現代語訳 (第9巻) (角川ソフィア文庫) |
紫式部,玉上 琢弥 | |
角川書店 |
![]() | 源氏物語―付現代語訳 (第10巻) (角川ソフィア文庫) |
紫式部,玉上 琢弥 | |
角川書店 |