国学というと、どんなイメージを持たれるでしょうか。
古臭くて民族主義的な偏狭な学問、といったところでしょうか。
しかし実際は、国学が大いに興ったのは、江戸時代も半ば過ぎ。
わりあいと新しい学問です。
それまでは、仏教学と儒学がわが国の学問の中心でした。
ちょうど平安時代に国風文化の華が開いたように、太平の江戸時代に、異国の学問を排して大和心を体現する国学が起こったというわけです。
古事記や万葉集を研究し、神道を重んじ、和歌を嗜み、仏教や儒教を無闇と攻撃するのが国学の徒の特徴でした。
幕府は儒学を正式な学問としていましたが、国学を排斥することはなく、黙認していました。
異国への反発や自国への誇りから、江戸時代の似非インテリは争って国学を学び、儒者や坊主を嫌いました。
現在の視点から冷静に見るならば、それは感情的に過ぎ、国粋主義的ですが、当時の時代状況を鑑みるに、不思議なほど欧米列強のナショナリズムの高揚と軌を一にしています。
本格的な帝国主義国家同士の争いが起こる前夜、各国はナショナリズムに燃え、なぜか鎖国下のわが国でもそれが起こったのです。
これはまことに奇妙なシンクロニシティであると言わねばなりません。
歴史に意志があるとは思いませんが、まるで巨大な無言の意志が、わが国に帝国主義列強の仲間入りをさせるために準備していたように思えてなりません。
そう思って現代社会の様々な事象をみるにつけ、いったい巨大な無言の意志は、私たちをどこに運ぼうとしているのだろうかと、不安になったりするのです。
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