大寒

文学

 今日は大寒ですね。
 24節季の最後。

 「暦便覧」では、冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也、と説明しています。
 たしかに今日は北風が吹いて首都圏は寒いですが、晴れていて、南向きのわが家のリビングはぽかぽかです。

 大寒というと思い出すのが、飯田龍太の、

 大寒の 薔薇に異端の 香気あり

 という句ですねぇ。
 飯田蛇笏の倅で、現代的な感覚で句作にいそしんだ人で、上の句は中でも有名なものでしょう。
 
 上の句は本来初夏に咲くべき薔薇が冬に咲いて、その香気に異端を感じるというわけで、その言葉の選び方など、極めて幻想的で耽美的なものです。

 その言葉遣いから、私は長いこと俳句の魔術師、西東三鬼の作と勘違いして覚えていました。
 お恥ずかしいかぎりです。

 西東三鬼大寒の句といえば、

 大寒や 転びて諸手 つく悲しさ

 を挙げなければなりますまい。
 ここには老境に到ったのであろう俳人の寂寥感が、冬の凍てつく感じとあいまって、独特の悲哀を感じさせます。


 四季がはっきりしたわが国には、それぞれの季節ごとの楽しみがあり、特に冬のような厳しい季節には、なおさらそれを楽しむことによって、過酷な季節を乗り切ろうとした古人の智恵が感じられます。

 今度の火曜日と木曜日には首都圏に雪の予報が出ています。

 通勤ではしんどい目に会うでしょうが、せめてわが家にたどり着いたのなら、幻想的な美しさを放つ雪景色を肴に、雪見酒としゃれこみたいものです。


季題別 飯田龍太全句集
飯田 龍太
角川学芸出版


飯田蛇笏秀句鑑賞
丸山 哲郎
富士見書房

 

西東三鬼集 (朝日文庫―現代俳句の世界)
西東 三鬼,鈴木 六林男
朝日新聞社

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