江戸川乱歩の名作「妻に失恋した男」を映画化した「失恋殺人」を昨夜鑑賞しました。
宮地真緒が大胆な濡れ場を演じているとかで話題になり、成人映画の指定を受けていますが、ハリウッドのサスペンスなどに比べれば大人しいものです。
18禁どころか15禁にすらする必要はないでしょう。
私は宮地真緒という女優をよく知らなかったのですが、映画評にあるような体当たりの演技という感じではなかったですねぇ。
親の遺産で遊んで暮らすお金持ちの南田。
彼は深く、というより偏執的に妻を愛していますが、妻のみや子はストーカーじみた夫を怖れています。
そんな中、みや子は自分がかかっている歯科医と深い仲に。
ややこしいのは、南田もその歯科医にかかっており、妻が浮気しているかもしれない、と不安を漏らし、探偵を雇おうか、なんて言い出します。
歯科医は自ら探偵を雇い、みや子の素行調査を依頼します。
これは理解しにくい行動です。
だってみや子の浮気相手は歯科医自身なのですから。
おそらく、南田が実際に探偵を使うかを監視したかったものと思われます。
妻へのいびつな恋情をつのらせる南田。
浮気のはずが、のっぴきならない本気の恋へと発展してしまうみや子と歯科医。
歯科医に雇われている看護婦は秘かに歯科医に懸想しているようですが、浮気現場を目撃し、給料の値上げを要求します。
じつは恋破れ、脅迫めいた給料アップを求める看護婦こそが、最も良い芝居をしているように見えます。
そして看護婦は匿名で南田にみや子と歯科医との関係を密告します。
対決を余儀なくされた南田と歯科医。
しかしお互いに、どこまでも静かに、紳士的に対するのです。
結果としての殺人。
映画としての深みは感じられませんが、歯科医院のピンクっぽい照明はそこが人妻との密会の場であることを暗示し、無機質であるべき診察室が、背徳的な香りを醸し出します。
そしてまた南田の純和風の豪邸が、これまた道を外した妻と嫉妬に狂う夫との修羅場になるであろう予感を感じさせます。
衣装といい、歯科医院や南田の家といい、作り物で偽物めいた、現代日本人が考える昭和初期のお金持ちを彷彿とさせて見事です。
この映画の本質は、なんでもない、耽美的で背徳的な雰囲気にあるものと思われます。
何度も言いますが、官能作品を期待すると肩すかしをくらいますよ。
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