女流官能文学者

文学

 斎藤綾子という官能の世界を描く作家がいます。

 私は「愛より速く」という自身の性遍歴を綴った自伝的作品と、バリの森の奥で女性ばかり4人の小さなコミュニティーで夜な夜な互いの体を貪り合う女たちと、東京から恋人を亡くして傷心旅行に着た女性との不思議な関係性を描いた幻想的作品「ルビー・フルーツ」を読みました。

 私には少々性描写がきつくて、この2作だけで充分だと感じるほどでした。

 ただ、性愛を描く女流作家が、えてして肉体的愉悦以上に、人間同士の愛情みたいなものをちらつかせて、私を白けさせるのとは逆に、この作家の作品はどこか明るく、乾いていて、ドロドロの女流官能作家とは一線を画しています。

 「愛より速く」は高校生の時読んだのですが、官能小説というもの、どこか喜劇めいているな、という印象を持ちました。

 それは団鬼六「花と蛇」シリーズなんかも同様で、どこか滑稽で不思議な味が、官能小説の本質なのではないかと感じたことを覚えています。

 性体験を秘め事とか言いますね。
 秘めているからそこには神秘性や神聖さが内在しているのであって、文章で表に出し、秘することを止めれば、滑稽に思えるのは言わば当たり前です。

 現在数多く出されているアダルト・ビデオもその大半が滑稽に感じるのも、秘すべきことを堂々とカメラの前で行っているからでしょう。
 
 余談ですが、アダルト・ビデオやエロゲーなど2次元の世界にどっぷり浸かり、もっぱら自慰行為で性欲を満たしていると、生身の女(たまに男)を前にすると、不能に陥ったり、使い物にはなるものの射精に至れなくなる、という話を耳にします。
 オナニストの誕生ですね。

 斎藤綾子が特別助平というわけではないでしょうが、あからさまに文章に記す点は特別でしょうねぇ。

 倉橋由美子の性交渉を記述する作法は、一言、そして二人は歓を尽くした、だけです。
 「シュンポシオン」などに見られます。
 それだけで、十分伝わるでしょう。

 くどい滑稽譚と読めば面白いですが、官能の世界というものは、読むより自ら経験するほうが、よほど面白いですねぇ。

 恋愛小説もそうですね。
 100冊恋愛小説を読むより、1回実践に及んだほうが、よほど面白いし、様々なことを学べます。

 2次元の世界で満足している方がいらっしゃったら、勇気を出して生身の異性とお付き合いすることをお勧めします。
 2次元の世界よりエキサイティングで面白いこと間違いなしですよ。

愛より速く (新潮文庫)
斎藤 綾子
新潮社

 

ルビーフルーツ (新潮文庫)
斎藤 綾子
新潮社

    

シュンポシオン (新潮文庫)
倉橋 由美子
新潮社

 

花と蛇〈1〉誘拐の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎
花と蛇〈2〉涕泣の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎
花と蛇〈3〉飼育の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎
花と蛇〈4〉調教の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎
花と蛇〈5〉憂愁の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎
花と蛇〈6〉羞恥の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎
花と蛇〈7〉屈辱の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎
花と蛇〈8〉号泣の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎
花と蛇〈9〉被虐の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎
花と蛇〈10〉完結編 (幻冬舎アウトロー文庫)
団 鬼六
幻冬舎

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