孤独死

思想・学問

 最近大マスコミで無縁社会やら孤独死やらを多く取り上げますね。
 無縁社会はプライヴァシーの重視や個人の尊重などの新しい価値観がもたらしたもので、それ自体は悪いことではありません。
 また、無縁というのは個々人の感じ方の違いで、同じ境遇にあっても平気な人もいれば無縁だ、と言って苦しむ人もいます。
 客観的な無縁社会なんてありえません。

 
君子の交わりは淡きこと水の如し

 と「荘子」にあります。
 
 また、
 
  
犀の角のようにただ独り歩め

 と「スッタニパーダ(原始仏典)」にあります。

 人は人との交わりを減らして、己一人の内奥を探索すべきだということでしょう。
 孤独は求めるもの、怖れるものではありません。

 また、孤独死といいますが、孤独でない死というのはあるんでしょうか。
 おそらく死に至る一定の期間孤独に苦しんだ、ということで、死そのものは孤独でしかありえないものです。
 死の床に百人もの家族・親族・友人・知人が集ったところで、死が持つ本来的な孤独は解消しえないでしょう。
 むしろ、こいつらは元気なのに俺だけ死ぬとはなんと孤独なことだ、と孤独感を深めるかもしれません。

 死が孤独で怖ろしいものであることが自明である以上、生きている間に孤独を楽しみ、人間存在の本質的な孤独性に気づく必要がありましょう。

荘子 第1冊 内篇 (岩波文庫 青 206-1)
金谷 治
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荘子 第2冊 外篇 (岩波文庫 青 206-2)
金谷 治
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荘子 第3冊 外篇・雑篇 (岩波文庫 青 206-3)
金谷 治
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荘子 第4冊 雑篇 (岩波文庫 青 206-4)
金谷 治
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ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)
中村 元
岩波書店

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