学生時代

文学

 私の先輩が、この四月に定年退職して、そのまま農業を学びたいと、某大学農学部に入学しました。
 知らない間に受験勉強していたのですね。
 それにしても、還暦を迎えて大学生とは
 六十の手習いというわけですか。
 うらやましいかぎりです。
 将来は農家を目指すんでしょうか
 最初の学生の頃はヘルメットをかぶって警官相手に角材を振り回していたそうです。
 いかにも団塊の世代らしい第二の人生です。

 私は学生に戻れるとしたら、理系の学問を学んでみたいですね。
 
 もうあはれとかをかしはいいです。

 学生に 学生時代問われ居り いいちこの瓶 倒して立てて

 
佐々木幸綱の歌です。
 安い焼酎を飲みながら、学生たちに自分の学生時代を語る老教授の絵が浮かびます。
 おそらく作者自身を歌ったものでしょう。
 この場合、学生も教授も男でなければなりません。
 別に男女差別をするわけではありませんが、師と弟子が酒を酌み交わす図は、私の美意識では男同士でなければならないのです。
 ましてそれが国文学徒であればなおさらです。
 もしかしたら、かつて私自身が国文科の学生であり、女子大生がまわりに多すぎたせいかもしれません。

 私の卒論の指導教授も今は亡く、源氏や伊勢、和歌を教わった老先生も一線を退いて長くたちます。
 じつに時の流れというもの、ああ、はれ。

佐佐木幸綱 短歌に親しむ (NHK短歌入門)
佐佐木 幸綱
日本放送出版協会