地球が丸くて、しかも宇宙の片田舎にある太陽の周りをぐるぐる回っている、とする事実を突き付けられたとき、当時のヨーロッパの人々はひどく動揺したようです。
それはそうでしょう。地球は宇宙の中心にあって、地球の周りを他の星が回っていると考えていたのですから。
宇宙の中心にある星に君臨する人間は、神様に似せて作られた立派な生き物のはずでした。
それがその他大勢になってしまったわけです。
学芸会でお姫様役のつもりだったのに、どっちを向いてもお姫様で、誰も世話する役がいなかったようなものです。
かくして、地球及び人間は、自らの力で孤独に生きる運命を思い知らされました。
古代、北欧では、巨大な木が世界を構成していると考えられていました。その名称は、宇宙樹とも、世界樹とも。
下の絵が、北欧で考えられた世界です。
イスラム教にも、天上に通じる巨木に対する信仰が見られます。
わが国においても、杉の木や楠などの巨木にしめ縄を張って、ご神体としてお祀りしますね。
木だけでなく、古くはバベルの塔やピラミッド、現代ではドヴァイ・タワーや建設中の東京スカイツリーなど、人間は天上へ天上へと志向していきます。
天上には天国があると考えた古代人の深層意識を、現代人も受け継いでいるようです。
馬鹿と煙は高いところが好きだと言いますから、人間の馬鹿さ加減を示しているとも言えましょう。
![]() | 宇宙樹 |
竹村 真一 | |
慶應義塾大学出版会 |
この本は、世界の巨木信仰を紹介しつつ、自然と人間の共進化の可能性を探るエキサイティングなエッセイです。