寅さん

映画

 今日は一日部屋に籠り、Netflixで寅さんを観たり、You TubeでBABY METALやSEKAI NO OWARIの動画などを観て過ごしました。
 昨夜は土曜日ということで少し酒が過ぎたようで、動く気が起きなかったのです。

 寅さんは第1作と第2作を続けて鑑賞しました。
 寅さんシリーズは全て観ていますが、第1作と第2作は特に優れているように感じます。
 寅さんは若くて元気だし、物語が第3作目以降よりも重層的だと思います。

 

 基本的に寅さんが片恋をし、ふられて的屋の旅に出る、というのが物語の根幹をなすわけで、第1作目も第2作目もそれは同じです。
 ただ、第1作目ではさくらの結婚があったり、第2作目では生き別れになった産みの母親に会ったりして、物語に厚みが感じられるのです。

 寅さんは葛飾柴又の生まれ育ちということで、たびたび江戸川土手でくつろぐシーンが出てきます。
 私はお隣の江戸川区で生まれ育ち、江戸川土手は懐かしい景色であり、江戸川土手の少し田舎臭い風情が、郷愁を誘います。
 登場人物たちが操る爽やかな下町訛りもまた、私にとっては心地よい語感です。

 ただし、葛飾柴又は下町というよりは郊外と言ったほうが良い立地で、駅前から少し離れると小松菜畑が広がったりしており、それは江戸川区も同じです。
 しかし寅さんシリーズではそういった本当の柴又は描かれません。
 あくまで下町の一角という設定です。
 そこに少し違和感を感じます。

 私の後輩に、寅さんを観ると腹が立つから観ない、と公言している者がいました。
 寅さんのあまりの感情の起伏の激しさや、我儘なところが後輩にそう言わしめるのでしょうね。

 ヤクザというもの、感情の起伏が激しい人が多いと聞いたことがあります。
 怒った時は激しく、笑う時は腹の底から、悲しい時には人目もはばからずに泣いたりするそうです。

 寅さん映画は一種のファンタジーみたいなもので、現実を描いたものではありません。
 惚れっぽいくせに恋が成就したことはなく、毎晩酔っぱらっています。

 そんな寅さんを観ていると、裏の顔というか、ヤクザの本性みたいなものが描かれていないことが、寅さんを奥手で純情な中年男に見せていると感じます。
 しかし私は、裏の顔を描いた寅さん映画があったら興味深いと思います。

 おそらくは博打もやるでしょうし、女も買うでしょう。
 ヤクザ同士の紛争みたいなものもあるかもしれません。
 そういったダーティーな面を描かないところがこの映画がファミリー向けのファンタジーになった所以でしょうね。

 しかし人間には、どんな真面目そうに見える人でも、必ず裏の顔があるものと思います。
 人間の本性はどうしようもなくドロドロしたものです。
 そのドロドロを描くと文芸作品と言われ、描かなければエンターテイメントと捉えられるように感じます。
 好悪は分かれるところでしょうが、どちらも興味深いものです。

 寅さんは生まれ持ったヤクザな気性から的屋となって旅から旅の生活を送り、それは勤め人の憧れです。
 毎日職場に通い、真面目に働いて給料をもらうという生活は堅実なもので、世間では人はそうあるべきだと言われています。
 私は自身が真面目な勤め人であるにも関わらず、いやそうであるからこそ、寅さんのような生き方をしてみたいと感じます。

 もしかしたら、そういう生き方こそ、人間の本能に従った正しい在り方なのかもしれません。
 人間の本性が垣間見えると言いましょうか。
 そうでなければ、寅さんがこれほどまでに人気が出るはずがありません。

 日曜日の夕方は明日からの仕事を思い、憂鬱に沈むものですが、今日は「男はつらいよ」の第1作、第2作を鑑賞したせいか、少し、憂鬱が和らいだように感じます。