寒の内

文学

 今は寒の内。

 1月6日に小寒を迎え、1月21日の大寒をピークとして、2月4日の立春までが最も寒い時期とされます。
 今日もどんよりと曇って、窓の外は寒そうです。

 この前の土日はセンター試験が行われましたね。
 センター試験というとよく雪が降りますが、首都圏は雪を免れました。

 受験生にとっても、受験準備からセンター試験当日まで大わらわで対応にあたる大学職員にとっても助かりました。
 センター試験の日に雪かきは辛いですからねぇ。

 しかしこの寒さの中にこそ、萌えいずる命の息吹が脈打っているのだと思うと、生きとし生ける者すべてが愛おしく感じられます。

 雪ふれは 冬こもりせる 草も木も 春にしられぬ 花そさきける

 「古今和歌集」に所収の紀貫之の和歌です。

 雪の下で、春には見ることのできない花が咲き誇っているのだ、という想像上の歌です。

 命の不思議と、人々の切ない願いとが一体となって生まれた、幻想美の和歌なんですねぇ。

 私たち日本人は、こういう気持ちで春を待ったのですねぇ。
 北国であれば切実に、南国であれば想像上の雪を想って、待ったのですねぇ。

 わが民族ほど季節感を大切にする人々はおりますまい。

 手紙は必ず時候の挨拶からはじまり、家の模様も夏と冬ではまるで異なり、着物や小物もまた同様。
 節句を祝い、異教の祭りであるクリスマスやハロウィーンまで、日本の季節の風物詩にしてしまいました。

 花を愛で、花火に酔い、月に見惚れ、色づく木の葉に圧倒されて、冬がきます。

 そして雪見酒やら、正月やら、冬は飲む機会が多いですね。
 さびしい冬をにぎやかに過ごそうという趣向でしょうか。

 春にしられぬ花、観ることは決して叶いますまいが、一目、観てみたいものですねぇ。

新版 古今和歌集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
高田 祐彦
角川学芸出版

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