尖閣諸島 中国人船長釈放 

社会・政治

 尖閣諸島の事件で、勾留されていた中国人船長を釈放する、との報に接しました。
 沖縄地検によれば、日中関係を考慮した、とか。
 
 地検が外交を配慮する必要があるのでしょうか。
 法に反したのなら、法に基づき堂々と起訴すれば良いし、反していないのなら釈放すればよいことです。
 外交を配慮する必要は全くありません。

 明治24年、有名な大津事件がありました。
 来日していたロシアの皇太子ニコライに、大津で警備にあたっていた巡査が切りつけて重傷を負わせ、日本政府はロシアへ気を配り、司法省に働きかけ、巡査を死刑にしようとしましたが、大審院院長が傷害罪で死刑は適用できない、と突っぱねて三権分立を守った、という事件です。

 明治人は気骨がありました。

 今回のケースは、日本政府から沖縄地検に圧力があったのか、沖縄地検が勝手に外交問題を忖度したのか不明ですが、「日中関係を考慮した」と発表したのでは、中国の圧力に屈します、と言うに等しく、嘘でもいいから「立件するだけの証拠がなかったためで、日中関係は何の関係もない」、と言うべきでした。

 これで、国民の反発は高まり、菅政権の支持率は下がるでしょう。
 そして中国は、日本は脅せば屈する国だ、との認識を持つでしょう。
 南沙諸島の問題で中国にやられっぱなしのASEAN諸国は失望し、米国は日本を守るに値しない国、と感じるでしょう。

 この一件が将来に大きな禍根を残すことは火を見るより明らか。
 中国は脅していただけです。脅して様子を見ていただけのこと。
 
 大津事件のように、司法は毅然として、法だけを根拠に判断すべきでした。

大津事件―ロシア皇太子大津遭難 (岩波文庫)
尾佐竹 猛,三谷 太一郎
岩波書店
児島惟謙―大津事件と明治ナショナリズム (中公新書)
楠 精一郎
中央公論社
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