師走

文学

 早いもので、昨日から師走になりました。
 かつて支払いのツケは大晦日までに精算することとされており、このままでは年が越せない、という言い様は、庶民感覚に合っていたものと思われます。
 金策に走る寒い月だったのですねぇ。

 冬ごもり 小ぜにをかりて 笑はるる

 正岡子規の句です。
 どこかユーモラスな感じを受けますが、精算すべき日の近くに小銭を借りるというのはよほどのことだったんじゃないでしょうか。

 いそがしく 時計の動く 師走哉

 こちらも同じ俳人の句です。
 こちらは世間一般の慌しい師走というイメージに合っていますね。

 現代では、借金をしていてもその返済期限は様ざまで、年末だからと特別慌てる必要はありません。
 それはきっと人々の生活にとって良いことなのでしょうが、年内に厄介ごとは片付けて、清浄な気持ちで新年を迎えようと言うわが国古来の風習が廃れるのは寂しいような気もします。

 もっとも、私が返済に窮するような借金を負ったり、ツケを持ったりしたことがないから言えることなのかもしれません。

 我々サラリーマンにとっては、師走はボーナスが支給される嬉しい月でもあります。
 ここ数年ボーナスは減少傾向ですが、それでもまとまった金がもらえるのは有難いことです。
 もっとも、住宅ローンのボーナス払いでボーナスの四分の一は消えてしまうのですが。
 住宅ローン、35年ローンで組みましたが、繰上げ返済を繰り返し、およそ19年で返済の見通しです。
 あと7年。
 できればさらに繰り上げ返済をして、あと3年くらいに縮めたいところですが、車の走行距離が5万キロを超え、そろそろ買い替えかなと思っているので、繰上げ返済にまわすお金は無いでしょうねぇ。

 江戸っ子は正月を評して、風呂の中でたれる屁のようなものと言ったとか。
 師走の慌しさに比べて、正月はあまりにも退屈だったのでしょうねぇ。
 とくに長屋住まいの独身者にとっては、何もすることがなかったのでしょう。

 このところめっきり寒くなって、確かな時の移ろいを感じます。
 四季のある日本に生まれた以上、過酷な冬も、冬らしく楽しみたいものです。

子規句集 (岩波文庫)
高浜 虚子
岩波書店

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