平城京遷都と畳

思想・学問

 近頃平城京遷都1300年とやらで、奈良のあたりがかまびすしいですね。
 気持ちが悪い、と悪評さんざんだったせんと君も、インパクトがあって良い、と高評価。
 たしかに一度見たら忘れられない面構えではあります。

 先日、大仏造営の頃を舞台にしたドラマを観ました。
 吉岡秀隆が吉備真備役をやっていて、およそ古代の大政治家には見えない大根ぶりを発揮していました。明らかなミスキャストですね。
 そのドラマを見ていて思ったのですが、床が石なのですね。
 そして家の中でも木靴を履いています。
 衣装もまるっきり中国風です。
 わが国が大陸から受けた影響の大きさを感じさせられます。

 また一方、遣唐使の廃止が契機になったと言われる国風文化の発展が、どれほど大きな意味があったかを思い知らされます。
 赤くない文化大革命だったのではないでしょうか。

 「源氏物語絵巻」には、板張りに畳が数枚敷いてある絵が散見されます。
 古くは畳は敷布団だったとか。
 冬は寒くてしかたありますまい。
 「源氏物語」でも、むやみにそこいらにごろんと横になって寝ています。
 立って半畳寝て一畳と言いますから、畳が寝具だったことがうかがえます。

 鎌倉時代以降、今日見られるような、部屋中に畳を敷き詰める風習が見られるようになったようです。
 いわば寝具からカーペットになったのですね。
 
 江戸の長屋は畳敷きのイメージですが、当時は店子が畳を持ちこんだとか。
 カーペットだと思えば頷けます。
 だからムシロを持ちこんでも、板張りのまま、今風に言うとフローリングでも良かったわけです。

 我が家はいわゆる4LDKのマンションですが、畳の部屋は6畳が一室あるだけです。
 その6畳間を応接間として正しく使ったのは、購入してちょうど10年目ですが、わずかに3回だけです。
 そんなに客が来るわけもないので、今では洗濯物の部屋干しに使っています。
 
 しかしそれでも、夏場の風呂上りなど、畳の感触が恋しくて、半裸でその部屋に横になったりします。
 その時、日本の長い歴史が作り上げ、今も継続して使用されているこの畳に、直に肌を接しているのだな、と、しばしうっとりするのです。
 他の国に例を見ない畳が、わが国においても減少しているのは寂しいかぎりです。
 そのうち着物みたいに、日常空間では使用しない、特別な儀礼や祭祀でのみ使う古い遺物になってしまうかもしれません。

 まずは率先して、10年そのままの畳を張り替えて、畳の繁栄に貢献してみましょうか。

畳のはなし (物語ものの建築史)
佐藤 理
鹿島出版会

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