忘れられた日本人

思想・学問

 今日は異端の民俗学者、宮本常一の忌日です。
 1981年、75歳で亡くなりました。

 漂流民や被差別民を主なフィールドとし、柳田民俗学の一派からは無視され続けていましたが、晩年、やっと世に認められるようになりました。

 私にとって印象深いのは、「忘れられた日本人」ですねぇ。
 名著だと思います。

忘れられた日本人 (岩波文庫)
宮本 常一
岩波書店

 昭和14年から日本各地の老人に聞き取り調査をし、様々な職業、身分の人々の生活を生々しく再現し、政治家や文化人などの華やかなものばかりになりがちな歴史の裏に潜む民衆のたくましさを活写して見事でした。

 私がとくに印象に残ったのは「土佐源氏」

 馬を引いて荷物を運ぶ馬子という仕事をしていた男が、行く先々で大店や庄屋の奥様と不倫。
 それがまた、荒れ果てた神社のお堂で逢引きしたり、森の中で青姦に及んだり、田舎のことで連れ込みなんかなくて、事を行う場所に苦労していたようです。
 妻子を捨てて馬の世話と女を可愛がることだけに生きた男の記録です。

 そんなことをして50歳を過ぎ、男は失明して何十年ぶりかで妻の元に帰ってきます。
 妻は優しく迎え、もう仕事ができないということで、夫婦二人、橋の下に小屋をたて、乞食をして余生を送るのです。
 やるせないですねぇ。

 事実は小説より奇なりと言いますが、誠に世の中というのは様々なものですねぇ。

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