初夏の一日、頂戴した亡父の蔵書の中から、「日本の詩歌」全30巻など紐解いています。
先人の多くの詩歌に触れ、亡き人を友とするのは、じつに楽しいひと時です。
その中で、吉井勇の短歌に心奪われました。
吉井勇は伯爵家に生まれたわりには、いや、生まれたからこそ、どこか耽美的でいて、厭世的な歌を多く残しています。
寂しさの 極まるところ しら玉の 女身のほかに 欲(ほ)るものもなき
ずいぶんストレートに女性を求める歌のようですが、女性を求めるのが肉欲なのか、あらいは寂しさのゆえなのか、意味深長な作りこみになっています。
忽然と われ星となる不思議など あれかしこの夜 あまり寂しき
ずいぶん寂しがりだったのですねぇ。
でも星になっちゃうかも、なんて詠まずにいられない気持ち、なんとなくわかりますねぇ。
ひとり生き ひとり往かむと思ふかな さばかり猛き われならなくに
気弱な歌ですねぇ。
でも誰だって、お釈迦様が説くように、犀の角のようにただ1人歩め、と言われたら、戸惑っちゃうと思いますよ。
思ふこと すべて違いぬ志 やや大にして せんすべもなし
これはすべての凡人の魂の叫びでしょうねぇ。
だいたい夢や野心、志が叶う人なんてごくひと握りですからねぇ。
しかし吉井勇先生は戦前は伯爵であられて、戦後は宮中歌会始の選者となるなど、和歌の世界で大成したではないですか。
他にも秀歌が数多くありましたが、今日はこの辺で。
「日本の詩歌」全30巻をはじめ、一部を戴いた亡父の蔵書で、相当長く楽しめそうです。
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