情報整理への欲望

思想・学問

 パソコンが普及してからというもの、パソコンを起動しない日はなくなってしまいました。
 
 ただの道具であるパソコンが、これほど多くの用途に使われるのは驚異的です。
 文書作成だったり表計算だったりメールだったりインターネットだったり動画だったりゲームだったり、各種ソーシャル・メディアだったり。
 
 そのなかで検索ということに関しては、Googleの巨大さは突出しています。
 Google世界の情報を整理する、という掛け声のもとに、驚くべき検索エンジンを築きあげました。
 単にあるページに関連の言葉があるかどうかという基準だけではなく、そのページがどれだけの人にリンクしているかを瞬時に見分け、多くの人がリンクするものは良いものだと言う前提のもと、たちどころに検索を終えてしまいます。
 情報整理への欲望と言っても良いものです。
 そしてその巨大過ぎる欲望は、私たちに畏怖を起こさせます。
 
 そのような欲望に取りつかれた人は、昔からいました。
 そういう人々は、昔であれば巨大な図書館を作り、日々情報を蓄積して巨大化させ、しかも整理分類して情報を求める者にたちどころに渡して見せる、という離れ業に自己陶酔してきました。
 そしてそれは、現在も大規模図書館や大学図書館で行われていることです。
 おそらく、初期の検索エンジンは図書館もしくは百科事典あるいは電話帳のようなものを目指していたと推測されます。
 しかしGoogleは、それをはるかに凌駕し、今やコンピュータに知能を持たせようと研究を進めているそうです。
 今までコンピュータは情報を提示するだけで価値判断は行わなかったわけですが、今後はそれを目指す、と。
 
 しかし価値は国家や文化によって異なり、それに手をだせば世界スタンダードの価値観がいやでもGoogle主導で作られてしまうでしょう。
 コンピュータが価値判断をするということには、なぜか恐怖を感じますね。
 人間が良いと思うであろうものを事前にコンピュータが判断するとなると、一種の検閲ということになります。
 情報整理への欲望に憑かれた人々は、コンピュータを万能と考えて、なんでもやろうとするでしょう。
 しかし人間存在の本質を危うくするような技術には、あえて手を付けないというのが、人類の知恵ではないでしょうか?
 
  Google創設時からのデザイナーが退職して、話題になりました。
  例えば水色を使うデザインを構想したら、何百もの水色をインターネット上にちりばめ、最もクリック数の多かった水色を使う、という手法を使うようになり、それは色だけではなく、フォントや行間にも使われ、これはデザインではない、と言って辞職したそうです。

 情報革命は始まってわずか二十年足らず。
 この先どうなるのか想像もつきません。
 しかし行きつく果てが人工知能を備えたコンピューターに考えることをすべてお任せするのだとしら「マトリックス」のような恐怖もあながち絵空事ではありますまい。

現代思想2011年1月号 特集=Googleの思想
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