今日は憂国忌ですね。
あれから40年。
三島由紀夫は戦後の日本に絶望し、自衛隊に決起を促した後、それがかなわぬと知るや、森田必勝を伴って割腹自殺をとげました。
しかし三島由紀夫が求めた美しい日本は、過去にも現在にも、そしておそらく未来にも存在し得ない理想郷。
それがかなわぬ夢だということは、三島由紀夫自身がよく知っていたに違いありません。
彼は張りぼての城のような、作り物めいた耽美的な文学世界を築き上げました。
おのれの作品だけでは満足できず、この日本国をも、自らの美意識に従う張りぼての美的国家に変化させようとして、失敗しました。
しかし失敗は予想のうち。
失敗した後は自らの人生を美的作品に仕立て上げるため、割腹という方法で自死を遂げたのでしょう。
いわば、美の道化。
彼が道化であったことは、「仮面の告白」を読めば自明です。
そしてそれは、彼が忌み嫌った太宰治の「人間失格」となんとよく似ていることでしょう。
彼はどこまでいっても文学者で、決して政治の人ではありませんでした。
彼は見事に美の道化を演じきった、不世出の文学者でした。
不幸なことに、彼の政治的主張は、ついに入れられることはありませんでしたね。
それは当然のこと。
美を目指した政治は、必ず、国民を不幸にするでしょうから。
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